全身での表現力、「音を彩る」力が培われた

桑原 あい(くわばら あい)さん
ジャズ・ピアニスト
1991年生まれ。幼少よりヤマハ音楽教室にてエレクトーンと作曲を学ぶ。ジュニアエレクトーンコンクール全日本大会小学生低学年部門、小学生高学年部門金賞受賞。インターナショナルジュニアオリジナルコンサート、ユニセフチャリティーコンサートなど、コンサート出演多数。雑誌「AERA」に天才エレクトーン少女として掲載。2004、2005年、小椋佳氏主催ミュージカル「アルゴ」エレクトーン奏者を務める。中学生後半よりピアノに転向。2010年、洗足学園高等学校音楽科ジャズピアノ専攻を卒業し、自身プロデュースによる1stライブを皮切りに、積極的にライブ活動を行う。これまでに4枚のアルバムを発表。現在、自身の ai kuwabara trio project他、ジャンルにとらわれない演奏活動を行っている。

――音楽とどのように出会い、どのように歩んでこられましたか?

4歳の頃、2人の姉がヤマハ音楽教室に通っていたので、ついて行って自然に始めました。幼児科を経てジュニア専門コースへ。ヤマハ内の「演奏研究会」にも入り、コンクールを目指してのレッスンに取り組みました。「創作講座」では、ジュニアオリジナルコンサート(JOC)に向けて、作曲専門の先生と一緒に曲作りも。平日も休日もヤマハに通い詰めて、学校の記憶がほとんどないくらいエレクトーン一色でしたね。

小学校4年・6年のとき、ヤマハエレクトーンコンクール全日本大会で金賞(1位)、5年生のとき銀賞(2位)をいただきました。

ジャズに出会ったのは小学校3年生の頃。コンクール用の曲を選ぶとき、先生方から「あいちゃんはリズム感がいい。クラシックよりリズムのある曲をやったほうがいいよ」と言われて。何曲かすすめられたうちの1曲に『キャプテン・フィンガーズ』(リー・リトナー)がありました。そのベーシストがアンソニー・ジャクソンで、彼の演奏を聴いてジャズ・フュージョンに目覚めたんです。未知の世界に入り込んだ感覚で、純粋に「かっこいい!」って。いろいろなCDを聴くうちに「ジャズ・ピアニストになりたい」という想いが強くなり、中学の後半でピアノに転向しました。

高校では音楽科でジャズを本格的に学び、19歳でCDを制作。2012年、20歳からプロのジャズ・ピアニストとして活動しています。

――幼い頃にヤマハ音楽教室で学んだ経験が、その後の音楽活動に影響していると感じることはありますか?

実は幼児科から中学まで、同じ先生に習ったんです。その先生がとてもファンキーな方で(笑)。レッスンは型破りでしたね。エレクトーンを弾くだけでなく、歌や踊りなどもふんだんに取り入れられていました。

幼児科の発表会の写真を見ると、私は誰より大きな口を開けて、ハイテンションな感じで写っているんですよ。家でもよく踊っていて、イスから転げ落ちたこともありました。全身で音楽を感じる、楽しむ、表現することが、この頃に身に付いたんじゃないでしょうか。

それに、その先生は、叱るときも褒めるときも真剣。うれしいことがあれば一緒に泣いて喜ぶような、喜怒哀楽をあらわに接してくれる方でした。愛情に満ちた、感情豊かな先生と一緒に過ごしたことも、表現力に大きく影響したのかもしれません。

ジャズに取り組み始めた頃は、よく耳で聴いて真似てという「耳コピ」をしていました。好きなミュージシャンのCDからアドリブの演奏(即興演奏)を聴き取る作業です。耳コピができたのも、幼児科からヤマハに通っていたことで「聴く力」が身についていたからかもしれません。そういった作業の中で演奏の構造を研究し、自身のプレイに取り入れるという事を積み重ねていきました。

もう一つ、ヤマハでの経験で良かったと思うのは、オーチャードホールなど大きなホールで弾く経験ができたこと。ステージから客席を見ると、まるで海のように見えました。「これは、ちょっとやそっとの表現では伝わらない」と思いましたね。お客様は理論的に正しい演奏を聴きに来ているのではなく、楽しみに来ている。だから、「観せる」という意識で弾くことが大事だと思うんです。いろいろなコンサートに行くけれど、客席側からとステージ側からは見える景色がまったく違います。ステージ側からの景色を子どもの頃から見せてもらったのは、とてもいい経験だったと思います。

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ヤマハが考える「音感」とは?