WAA普及率を上げる「ちょっとした幸せ」の実感

 WAAの実施率は、なぜ高いのだろうか。

 WAAを使う場合、「働く場所を変えること」と「時間の使い方を変えること」の2通りの方法が考えられる。このことがWAAの普及を促進していると島田氏は言う。

 「働く場所」は、カフェでも自宅でも構わないが、より制約を取り除くためにサテライトオフィスを設け、さらに利便性を向上させた。

 「導入に当たってパイロット運用をしたとき、“奥さん”を理由に出社してくる社員が多かったんですよ。『家にいると奥さんがいて仕事ができないから会社に来ました』と言うんですね。奥さんネタって結構多いんです(笑)。なんとかもっと自由に働く場所を選んでほしいと思って、制度開始から様々な会社様が提供するシェアオフィスをトライアル利用させていただき、弊社の社員であれば誰でも利用できるようにしています」

 制度を導入した2016年には、イトーキのサテライトオフィス「イトーキ東京イノベーションセンターSYNQA」、東急電鉄の「NewWork」、東急不動産の「ビジネスエアポート」を利用。シェアオフィスは非常に好評で、「もっと様々な場所に設けてほしい」という社員からの要望を受け、現在はザイマックスの「ちょくちょく…」を利用できるようにしている。

 2つ目の「時間の使い方」は、これまでは有休を取得せざるを得なかったような場面で活用できることが大きな特徴だ。例えば以下のようなケースである。

・ 通院
・ 家の用事
・ 子どもの学校のイベント
・ 両親の介護
・ 家族と過ごす

 「人は、有休を取得するなら何か“意味のあること”に使いたいと思うものです。通院など、“やらなくてはいけないこと”に使うのには何となく抵抗があるんですね。その点、WAAなら時間の使い方を変えるだけでよく、実施しやすいのです」

 「ジムに行く」「スポーツをする」といった趣味のための時間を取りやすいことも、WAAならではだろう。

 「平日の昼間に思い切りテニスを楽しみ、シャワーを浴びてすっきりしてから仕事をすると非常に効率が良いと話してくれた社員がいました。家のことをサポートできるようになって奥さんが優しくなった、子どもと話す時間が増えた、といったエピソードもよく聞きます。WAAによって、社員とその家族がちょっとした幸せを感じることができる。これがとても大きいんです」