ユニリーバ・ジャパンの新人事制度「WAA」を紹介する5回読み切りシリーズ。第2回「大事なのは長時間残業の削減ではなく、ビジョン」に続く第3回は、セミナー詳報下編。WAAの具体的な活用事例と社員の声、および課題から、制度導入を成功させるためのカギを探る。

導入から半年で社員の90%が「WAA」を実施

人事制度「WAA」について説明する、ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス取締役人事総務本部長・島田由香氏
人事制度「WAA」について説明する、ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス取締役人事総務本部長・島田由香氏

 ユニリーバ・ジャパンが2016年7月に導入した、働く場所や時間を社員が自由に選べる制度「WAA(Work from Anywhere and Anytime)」。導入後、約半年経った今気になるのは、実際どれくらいの社員がWAAを利用しているのか、という点だ。在宅勤務しかり、フレックスしかり、「結局は労働時間が増える」「周囲の目が気になる」といった理由で普及が進まないケースは多い。

 同社の統計によると、導入から1カ月後の調査で「1度でもWAAを実施した」とした社員は全体の70%だったが、6カ月後には90%に伸びている。さらに興味深いのは、WAAの実施によって「毎日にポジティブな変化があった」と答えた社員の割合が、1カ月後で60%、6カ月後で70%と、非常に高い数字を示していることだ。

 「社員の約7割が、漠然とでもポジティブな変化があったと感じている。これが非常に重要なポイントだと思っています」(ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス取締役 人事総務本部長・島田由香氏)

 労働時間に関する設問にも、約5%が「長くなった」と答える一方、25%が「短くなった」と回答。「WAAで生産性が上がった」と答えている社員も71.4%に上った。

 「感覚値でいいから、良い変化があったと思ってくれていることが大切」と島田氏は言うが、実際のデータを見てもWAA導入後の労働時間は着実に減少傾向にあるようだ。

 「以前は、毎月の残業時間が80時間を超える社員が3~4人、多いときは13人ほどに上り、個別フォローを継続的に行ってもなかなか減らすことができませんでした。過去、0人に抑えることができたのは1回だけです。ところが、WAA導入後には、12月までの6カ月間のうち4カ月は、月の残業時間が80時間を超える社員が0人になりました