子どもが楽しそうだと、親も幼稚園に関わるのが楽しくなってくる

 保育園に通う虎も、基本、楽しそうではあった。ただ、何回かに一度、園の入り口で「行きたくない」と泣きだしてしまうこともあった。今になって思うに、虎にとっての保育園はパパやママから引き離されてしまう場所でもあったのかもしれない。

 だが、行ってみないと今日は誰が来ているかわからない保育園と違い、幼稚園には毎日同じお友達が来ている。虎にとって、幼稚園はパパやママと離れる場所というより、仲良くなっていく友達と会える場所ということになったのだろう。わたしの知る限り、幼稚園の送りで虎が泣いたことは一度もなかった(ちなみに、ヨメが送っていった時は泣いたことがあったらしい)。

 面白いもので、子どもが楽しそうにしていると、親としても幼稚園に関わるのが楽しくなってくる。

 正直、最初は「めんどくせえなあ」と思わないこともなかった毎日の送り迎えも、行事がある際のちょっとした力仕事のお手伝いも、途中からは完全ノーストレスでやっている自分に気づいた。スキンヘッドに髭面という、およそカタギの人間には見えない風貌のせいもあるのだろうが、虎のお友達もすっかりこちらの顔を覚えてくれた。

 ある日のお迎えのことである。入り口の踊り場で虎が出てくるのを待っていると、普段虎と仲のいいリョー君(仮)がわたしに気づいた。

 「あーっ、虎ちゃんのパパだ!」

 「おう、りょーちゃん、こんにちは!」

 すると、リョー君は、ちょっと恥じらうようにしながら、こう言った。

 「あのさ、あのさ、虎ちゃんのパパってさ、どうしていつもかっこいいの?」

 その場に先生や他の父兄がいなかったことを、わたしは心の底から感謝した。誰にもこちらの顔を見られなかったことに。しばらくたって、「いや、りょーちゃんの中では“かっこいい”という単語は違う意味を持っているのかもしらんぞ」などとヒネた考えを持ったりもしたが、言われた瞬間のわたしは、確実にデロンデロンにニヤけていた。

 息子よ、今後もリョー君のことは大切にするように。

 だが、こんなこともあった。

 これまたある日のお迎えのこと。踊り場に真っ先に顔を出したのは、わたしが常々「この子は将来えらいこっちゃな男前になるな」とにらんでいるヒロ君(仮)である。彼の両親は超一流企業に勤めるスーパーエリートだそうで、「虎と違って落ち着いてるし、見るからに利発そうじゃない」というのがヨメの見立てである。

 そのヒロ君、わたしの顔を見るとパッと表情を輝かせた。ボクの知っている人が来た!──そんな時に子どもが見せる顔である。そして、言った。

 「あっ! 虎ちゃんのおじいちゃん!」

 息子よ、なんだったらヒロ君とだけは絶交してもかまわんぞ。(こら!大人げないこと言うな by妻)

 ま、そんなこんなでいろんなことがあった1年だった。