人の成功譚は注意深く読むべき

 ここで、繰り返し強調しておきたいと思います。因果関係を明らかにするためには、「反事実」を適切に想像できていることが重要です。因果関係がないのにもかかわらず、因果関係があるかのように勘違いしてしまうことは、たいていの場合、「反事実」をうまく想像できていないときに起こります。特に、素晴らしい偉業を達成した人の成功譚には注意が必要です。

 仮に子どもを有名中学に入れたという母親が書いた本に、子どもにスマホを使わせなかったと書いてあると、多くの人がスマホと学力の間に因果関係があると考えてしまう。しかし、反事実(=その子がスマホを使っていたらどうなっていたか)と考えると、子どもの教育のことで本を書いてしまうほどに教育熱心な母親の元で育てられたそのお子さんは、スマホを使っていたとしてもやはり学力が高かった蓋然性は高い。こう考えると、2つのことがらの関係が相関関係にすぎず、因果関係ではない可能性を指摘できます。正しく子どもの教育に投資をするために、「因果関係か、あるいは相関関係にすぎないのか」ということを把握することが極めて重要なのです。

(撮影/稲垣純也)