2015年6月に発売されてから販売部数累計30万部のベストセラー『「学力」の経済学』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者であり教育経済学者の中室牧子先生の独占インタビューを4回に分けてお送りします。第3回のテーマは「『因果関係』と『相関関係』の見極め方」です。

「因果」と「相関」を間違わないで

日経DUAL編集部 『「学力」の経済学』では、教育を経済学的に考える方法が紹介されています。経済学を学んだことのない、ママ・パパが自分の子どもの教育を経済学的に考えようと思ったときに陥りがちなワナがあれば教えてください。

中室 最も大事なのは、「因果」と「相関」を誤ってはいけないということです。こんな事例からお話ししてみたいと思います。

 2月15日の毎日新聞に「スマホ警告ポスター『使うほど学力下がります』日医作成」という記事が掲載されました。これは、日本小児科医会と日本医師会が過度のスマートフォンの使用を警告する目的で作成したもので、全国の診療所などで掲出されるといいます。

 このポスターの主張の根拠となっているのが、文部科学省が実施している全国学力・学習状況調査のデータを用いた分析で、小中学校とも普段スマホや携帯電話の利用時間が長い人ほど平均正答率が低い傾向がみられたというものです。確かにそういうデータを示されれば、「スマホを使っていると、学力が低くなる」と考えてしまいそうです。

 実は、私がこのニュースを知ったのは、お笑い芸人の西野亮廣さんがFacebookで取り上げていたのがきっかけです。西野さんは、ここで議論されている「学力」があくまで学力テストで計測された狭い意味での学力にすぎず、そうした狭い意味での学力にこだわってスマホ使用を制限することに疑問を投げかけています。西野さんの事務所には、「高校中退の明るいギャル」がいて、彼女がインターネットを駆使しながら、西野さんの事務所の貴重な戦力になっていることも紹介しています。こうした視点も重要なのですが、実は私がこのFacebook上の議論で一番面白いと思ったのは、「シャープペンシルも発売当初は『使ったら頭が悪くなる』って言われてましたよ」とコメントをつけていた方がいたことです。

 新しいテクノロジーが出てくると、必ずそれに対する警戒感から、子どもの健康や認知能力の発達に良くないという根拠のない通説が現れて固定観念となっていく。もしシャープペンシルを使ったら頭が悪くなるというのだったら、今頃、わが国は大変なことになっているはずです。新しいテクノロジーによって、自分の子どものころとは異なる学校生活を自分の子どもが送ろうとしていたからとて、それが必ずしも子どもにとって有害とは限りません。

中室牧子先生
中室牧子先生

次ページから読める内容

  • 経済学の研究では、2つのことがらの「因果関係」の把握に注力している
  • 「反事実」を思い浮かべるトレーニングを
  • 人の成功譚は注意深く読むべき

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