仕事と子育てをうまく両立させ、充実したライフを送っているパパ達。2017年版の特集では、これまで、超朝型生活にシフトし、優先順位を明確にしながら両立を果たしているりょうたっちさん(仮名)、職場の協力を得て、4人の子どもの継続性ある子育てを可能にしているオムロン株式会社の大野泰和さん、家事も育児も公平に分担しながら妻との良好な関係を築いている生活保護ケースワーカーの今田尚輝さんの3人にご登場いただきました。

 最終回の4人目は部下の育児と仕事の両立を支援する管理職=「イクボス」を企業などからの推薦によって募集・表彰する「イクボスアワード2016」(厚生労働省)のグランプリ受賞者が登場します。

 P&Gジャパン株式会社の鷲田淳一さんは、子どもの誕生を機に、「仕事人間だった」自分の働き方を見直し、自らも仕事と育児の両立を図ってきました。そして、その働き方こそが鷲田さんを「イクボス」へと導き、社内外から「イクボス」のロールモデルとして認知されるようになったといいます。両立パパ達が「職場の上司の理解」を強く求めていることは、第2回~第4回のインタビューでも明らかになりました。鷲田さんは、まさに両立パパが理想とする上司像と言えます。そんな鷲田さんの働き方と、イクボスとしての取り組みを語ってもらいました。

【共働き夫・イクボス四天王2017特集】
第1回 パタハラ問題はイクメンのステージが一歩進んだ証拠
第2回 フォロワー3000人ツイッターパパのパタハラ迎撃作
第3回 子が4人のオムロンパパは妻ファーストで家庭を回す
第4回 下の子入学、ここから巻き返しを図る公務員パパ
第5回 P&Gのイクボスは育児優先で部下とウィンウィン ←今回はココ

鷲田淳一さん 46歳 P&Gジャパン
経営管理本部 アソシエイトディレクター(部長級)
子ども: 4歳(男子)

「自分」から「部下」に視点をシフト

 子どもが生まれるまでの私は、仕事人間でした。30代で10人以上の部下を持つポジションに立ちましたが、正直、ワンマンだったと思います(笑)。結果を出すには自分でやるしかない、それには残業は当たり前、足りなければ睡眠時間を削ればいいというように、時間軸の思考しかありませんでした。

 しかし40代に入り、ひとつの転機が訪れました。熱望していた子どもが生まれたことです。子育てを妻任せにするのではなく、自ら深く関わりたい――。そう強く思い、これまでの働き方を見直す決心をしました。

 重責あるポジションにいる自分が、仕事と家事・育児を両立させるにはどうすればいいか。そう考えたとき、次の3つを意識しました。

 1つ目は、部下を育成し、彼らの能力を活用すること。すべての業務に自分が関与しないと気が済まないたちでしたが、視点を部下へとシフトさせました。部下を信頼し、一人ひとりに、自らの能力を発揮できるようなプロジェクトを与え、部下を成長させるとともに部署の業績を上げていく。そこに力を注いだのです。

 2つ目が、スケジュールを先の先まで俯瞰すること。数週間、できればもう少し先まで見越して、どのタイミングでどの仕事のどういうデータを誰からもらって進めるか、詳細に考えるようにしました。ある仕事が滞留すると、子どもの発熱など緊急の用事ができても身動きがとれません。先まで見越して準備しておけば、多少の時間的余裕が生まれると考えたのです。

 そして3つ目が、優先順位をできるだけ明確にすること。本当に自分がやらなければいけないことは何か、やらなくてもいいことは何なのかを考えるようにしました。例えば、会議ひとつにしても、「自分は発信できない」「機会がない」と思うような会議には出席を見合わせるようにしました。自分のコントロール下に置けないようなものは潔く切り捨てる。そうすることで、時間を捻出しています。

休日はマザーズバッグを持って息子とお出かけ
休日はマザーズバッグを持って息子とお出かけ

<次ページからの内容>
・2週間に一度の個人面談で部下が育つ
・仕事を任せるときは理由を丁寧に説明する
・子育て部下がノーと言える環境をつくるのがイクボスの仕事
・部下の能力を最大限に引き出す方法

次ページから読める内容

  • 「ロケーション・フリー・デー」と「フレックス・ワーク・アワー」をフル活用

  • 定期的に部下と個人面談を行い、進捗状況やスキルを確認する

  • 仕事を任せる際は、理由を丁寧に説明する

  • 部下が「ノー」と言える環境づくりを心がける
  • 仕事に優先順位や強弱をつけられるようサポートする
  • 部下の能力を最大限に引き出し、結果を出せるイクボスを目指す