まずは両立パパの現状を知るべし

 社会学では基本的に、現状がどういうものであるかをまず分析し、それに対して、なぜ、そうした現象が起こっているか、要因を考えます。そこで初めて、どういう対策があるかに目を向ける。そうした手順を踏まないと、実行力のある提案ができないからです。ところがイクメンは、手順を踏まずに、一足飛びに対策の話まで行ってしまった。

 本来は、どうして男性が育児参加できない状況にあるのか、なぜ、そういう状況が生まれたのか、だったら、その要因をこうやって除去し、男性の家事・育児を促しましょう――という順番で進むべきだと思うのです。

 ただ、今回の特集では、2回目以降に登場するパパ達が、仕事と育児の両立を果たす過程で、実は何に苦しみ、どう対策を練り、乗り越えているかを語ってくれています。なかにはパタハラを経験した人もいました。フルタイムで働く男性の育児参画が、どれだけ困難な状況にあるのか、これを語る人が出てきたということは、イクメン問題を考える上での新たなステージだと思うのです。

 先ほども言いましたが、育児は尋常でなく大変です。子育て世代のパパが、真っ向から仕事と、子育て、その両方に取り組もうと思ったら、困難に直面するのは当たり前。 仕事でも同じです。真剣に取り組めば取り組むほど問題の複雑性に迫ることになり、いい面も悪い面も出てきます。

 もっとも、晩婚化が進んでいますから、結婚が遅い男性なら、パパになった時点で、上位職に就いているケースもあります。それなら自分の権限で仕事を調節し、育児にコミットできるので有利でしょう。特集5回目に登場するイクボスはその代表例と言えます。今後は、こうしたイクボスが増えることにも期待しています。

夫婦がよく話し合い、子育てビジョンを共有する

 仕事と育児の両立を目指す際、短期的に効果が出る対策と、長期的に効果を出していく対策、この2つを同時に考えていく必要があります。

 今特集の第2回~4回に登場する3名のイクメンに共通しているのが、夫婦がよく話し合って、生活スタイルやビジョンを共有し、一つの方向性を決めていることです。これは、短期的な対策として非常に有効です。

 先日、私は、妻とこんな取り決めをしました。夫婦どちらかが言葉に出したことは、たとえ「納得がいかないこと」であっても、いきなり否定するのではなく、一度は飲み込もう――。

 この取り決めが意味しているのは、例えば私が「子育ては大変だ」と言ったときは、「そうだよね、大変だよね」と相手を受け入れる、ということです。ここで、妻が「私も大変よ」と返せば、険悪なムードになりかねません。

 連日、仕事に忙殺されている私は、妻に愚痴をこぼすことがあるのですが、そういうときに、否定されると、行き場がなくなります。外では否定される分、家のなかでは、せめて一度は受け入れてほしい。育休中で、一日乳児と向き合っている妻にも同じような思いがあるにちがいありません。そんな些細な願いを妻と共有したわけです。