しかし、「文筆とは理性的な仕事である」という矜持もいちおうあるのか、

「先生、小説というのは、自分で書く仕事でございます。技術でございます。自分自身がしっかりとした意志を持って作り上げていくものでございます。でも、それ以外の力……そうですね、こう、小説の神様といいましょうか、<何か大きなもの>によって書かされているというのも、また実感としてあるのであります。先生、わたしはその、今後、その<大きなもの>から見捨てられることなく、ずっと書き続けることができますでしょうか、どうでしょうか、どうか教えてください」みたいな、「おまえ完全にもっていかれてるやないか」みたいなわけのわからない質問をおろおろとつづけるそんな始末で、完全に、ふだんのスタンスどこいってん状態。

「先生、それはまじでございますか」

 で、さらに恥ずかしいことに……そう、それらの質問にたいして「それは、まじでございますか」って思わず聞き返してしまうくらい、わたしの仕事にとってこれ以上はないくらいに「いいこと」を占い師の方が言ってくださり、その時点でわたしの恍惚は頂点に。思わずその言葉を形にして取り出して、てのひらに載せて一生ころころーっと撫で転がしたいような、あるいはタトゥーにして刻んでおきたいような、そんな気持ちになることを言ってくださったのだった。

 そんな重要かつ今日いちばんのクライマックスに「ミエコさん、あちらで乾杯が始まるみたいなのでもうそろそろ……」なんつって布の隙間から顔を出したミミを「わたし抜きで!(キッ)」みたいな顔をして追い出し、対話は、そのまんま人生相談みたいな感じに。手を合わすいきおいで深々と頭を垂れ、その白い布で覆われた空間を出たあと、わたしは近年稀にみるくらいすんごいハッピーな気持ちになっていた。うきうき気分でバンドが演奏するワム!の「ラストクリスマス」に身を委ね、最高の気持ちでお酒を飲み、これまた近年稀にみる上機嫌な時間を過ごしたのだった……

「ミエコさん、どうでした!?」