4歳になるひとり息子を、芥川賞作家夫婦で育てながら超多忙な日々を送る川上未映子さん。仕事、お金、子育て、美容。健康、暮らし、人間関係。しあわせやよろこびだけでなく、おそろしいこと不安なこと、そして思わず、びん詰めならぬゴン詰めたくなる世間のあれこれを綴ります。人気コラム『川上未映子のびんづめ日記』シーズン2、全16回でお届けする第3回目のテーマは「占い」。未映子さんが占いの館で豹変したって本当ですか…?

 ああ、程度の差こそあれ、人というのはやっぱ基本的に「ご都合主義的」なものから免れないのかもしれんと、今日もフレシネを飲みながらそんなことを考えた。

 と話を続けるまえに……みなさま、あけましておめでとうございます! 今年がみなさまにとって実り多き一年になりますように。そして、本年もどうぞよろしくお願いいたします!

 さて、新年ということもあって初詣なんかに出かけられた方もきっと多く、ついでにおみくじを引いて一喜一憂された方もいらっしゃることでしょう。そう、考えてみれば、星座占い、血液型占い、なんとか占い……幼い頃から現在に至るまで、信じる信じないはべつにわたしたち、ごく自然なものとして占いのある生活を送ってきたのである。

占いは基本的に信じていないのである

 ほとんどの女性誌に占いのページがあり、気合を入れて特集するとほぼ完売。占いは雑誌にとっても、つねに重要なコンテンツなのだ。街にも占いの店があふれ、そのほかスピリチュアル全般に及ぶとなんて呼んでいいのかわからない種類のものまで盛りだくさん。じっさいに占い好きの女ともだちはすごく多いし、「色々あるけど、あそこだけはほんまにヤバイ。めっさ当たる、正直こわい」とか、これまで死ぬほど聞いてきた。

 もちろん、わたしも占いのページを読んで一喜一憂したことはあるし、友人と連れ立って、「有名な先生」に「みて」もらったこともある。でも、それもせいぜい十代までで、大人になってからは当然だけど、基本的に信じていない。「傾向」としても、信じていない。

 「今年は12年に一度の幸運期らしい!とくに今月始めることは種まきで、これからは何もかもうまくいくって言われた!」って喜んでいたのに2週間後に事故で亡くなった知人もいるし、首と腕にはもちろん、世界有数のパワースポットで収集してきたよくわからないけどその世界ではお墨付きのいかついパワーストーンを家じゅうに張り巡らしながら、やっぱり亡くなった友人もいる(死ぬことが最大の不幸というわけではないけれど)。

 何より、たとえば世界の様々な紛争地域などであれほど悲惨で極限の生活を強いられている人たちに「臆病にならず、色んなことにチャレンジを!金運はいうことなし!」とか「今日のラッキーチャームはマグカップ!お気に入りをそばに置いて」みたいなことが言えるのかって話で、そんなの言えるわけないのである。そんなふうに、人や場所や状態によって適用できたりできなかったりするものであるのなら、それはやっぱ信用できないと考えるのが、道理というもの。占術の専門家、あるいはスピリチュアル方面のみなさまからは「違うよ、そんなんじゃないんだよ……」と首をふりふりお叱りを受けるかもしれないけれど、個人的には、まあざっと、こんなふうに考えてきたんである……。

 なのに、このあいだ。

 とあるラグジュアリーなパーティーに仕事で参加することになり、そのパーティーには占いの先生がいらっしゃって、とくべつにみてくださると言う。