こんにちは。「知ろう小児医療 守ろう子ども達の会」代表の阿真京子です。昨年4月には熊本地震が、11月には福島沖で津波が観測され、津波警報や注意報が広範囲に発令されたことは記憶に新しいと思います。都内では30年以内に震度6弱以上の地震が起こる確率が47%といわれており、千葉市の85%、横浜市の81%と並び、「必ず起こる」として想定しておきたい現状です。
 子どもを持つ親にとって心配なのは、震災時に避難所で破傷風やインフルエンザが発生したという話です。先日、私達の会では「防災から考える感染症、予防接種」と題した講座を行いました。
 東日本大震災で産婦人科医として妊産婦や新生児の救護に携わった吉田穂波医師、熊本地震で世界の医療団 日本(MDMJ)として活動した早川依里子・小児科医を招いて行われた講座の模様をお届けします。災害時に起きたことを振り返りながら、子どもの感染症や予防接種について考え、必要性について改めて考えていきます。

避難所で爆発的に広がる感染症は「嘔吐下痢症」

 まず登壇したのは、国立保健医療科学院 生涯健康研究部 母子保健担当 主任研究官の吉田穂波医師です。吉田医師は、東日本大震災で産婦人科医として石巻や東松島に駆けつけた経験から、災害時の妊産婦・乳幼児への支援体制の必要性を痛感。災害時母子救護プロジェクトの活動をしています。以下、吉田医師による講演です。

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 子どもを抱える私達にとってまず心配なのは、子どもの体調と健康状態だと思います。避難所で爆発的に広がる感染症は嘔吐下痢症です。

 原因は、避難所の衛生環境が整っていないトイレです。詰まって流れない、排水できずに下水があふれる、それを防ぐため新聞紙に用を足して捨てざるを得ないこともありました。

 そんな状態で、多くの人が土足で歩き回っている状態です。手洗いも十分にはできません。スマトラ沖地震やアメリカのハリケーン・カトリーナの災害でも、嘔吐下痢症で亡くなる赤ちゃんが多くいました。

 避難所暮らしのストレスで、不眠や腹痛・下痢、食欲低下、かゆみなどの皮膚症状、持病の悪化、おねしょ、おもらしなどの症状が現れる子も増えます。心のストレスは、免疫状態を悪化させ、感染症にかかるリスクを高めることも分かっています。また、心の問題が起きても、災害時には医療の手助けを求めにくい部分もあります。

 東日本大震災のとき、岩手県では災害から1週間後にようやく避難所に小児科医の助けが来ました。被災地の小児科医や看護師はどうしても、病院内にいる病気の患者を守ることで精一杯で、避難所まで手が回らないのが現状です。

 医療が麻痺状態のなか、命に別状がない持病を持つ人や体調不良の人は、後回しになってしまいます。医療へのアクセスが悪いなかで、子ども達の健康を守るために、親には何ができるでしょうか?