避難所で爆発的に広がる感染症は「嘔吐下痢症」
まず登壇したのは、国立保健医療科学院 生涯健康研究部 母子保健担当 主任研究官の吉田穂波医師です。吉田医師は、東日本大震災で産婦人科医として石巻や東松島に駆けつけた経験から、災害時の妊産婦・乳幼児への支援体制の必要性を痛感。災害時母子救護プロジェクトの活動をしています。以下、吉田医師による講演です。
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子どもを抱える私達にとってまず心配なのは、子どもの体調と健康状態だと思います。避難所で爆発的に広がる感染症は嘔吐下痢症です。
原因は、避難所の衛生環境が整っていないトイレです。詰まって流れない、排水できずに下水があふれる、それを防ぐため新聞紙に用を足して捨てざるを得ないこともありました。
そんな状態で、多くの人が土足で歩き回っている状態です。手洗いも十分にはできません。スマトラ沖地震やアメリカのハリケーン・カトリーナの災害でも、嘔吐下痢症で亡くなる赤ちゃんが多くいました。
避難所暮らしのストレスで、不眠や腹痛・下痢、食欲低下、かゆみなどの皮膚症状、持病の悪化、おねしょ、おもらしなどの症状が現れる子も増えます。心のストレスは、免疫状態を悪化させ、感染症にかかるリスクを高めることも分かっています。また、心の問題が起きても、災害時には医療の手助けを求めにくい部分もあります。
東日本大震災のとき、岩手県では災害から1週間後にようやく避難所に小児科医の助けが来ました。被災地の小児科医や看護師はどうしても、病院内にいる病気の患者を守ることで精一杯で、避難所まで手が回らないのが現状です。
医療が麻痺状態のなか、命に別状がない持病を持つ人や体調不良の人は、後回しになってしまいます。医療へのアクセスが悪いなかで、子ども達の健康を守るために、親には何ができるでしょうか?