女性の社会進出の“裏テーマ”は男性の家事進出

山崎 とはいっても、子どもが生まれてからは何時までも仕事ができる生活ではなくなりましたね。時間制限を意識した働き方をしてほしいと、社内でも言っています。

羽生 「20代は夢中で仕事していた」という山崎さんは、クリエイティブな仕事と長時間労働の問題をどう思われますか? 私自身も20代の頃はとにかくご飯より仕事が好きで、会社の床に銀紙を敷いて仮眠をとっては夢中で仕事していた口です。当時はそれがまったく苦でなかったんですよね。 

山崎 単に長く働くことに価値があるとはまったく思いません。社会全体の問題として、長時間労働は改善しないといけないと思います。特に子育てが始まってから感じるのは、配偶者が長時間労働だと育児中の女性に大きな負荷がかかりますね。だから、女性だけでなく社会全体としてあらためるべき問題だと思います。

 一方で、個人的な価値観としては、仕事は労働というより趣味のようなものなので、長く働くことにストレスは感じないほうです。むしろ、「きりがいい時までやり切りたい!」という気持ちが強くて、仕事を積み残す方がストレスなんです。だから、ストレス解消法は?と聞かれたら「休みの日にカフェや図書館でじっくり普段できない事業の長期プランやプレゼンの構想を練ることです」って答えます(笑)。

羽生 思わず共感しちゃいます。今はだいたい何時くらいに帰っていらっしゃるんですか?

山崎 どんなに遅くても20時には帰るように意識しています。

羽生 きっと大変ですよね。

山崎 はい。ついギリギリまで仕事をしてしまうので、帰宅にタクシーを使うことが増えましたね。夫に「もうとっくに会社を出て山手線です」とか嘘ついて(笑)。

羽生 ご主人は同じ業界なんですか?

山崎 いえ、まったく違って外資系企業の財務コントローラーです。長時間労働を是としないヨーロッパ系企業なので19時すぎに帰宅できる日が多いので、私はすごく助かっていますね。育児は完全に夫婦折半でやっています。私の仕事のこともよく理解してくれているので、時々遅くなっても認めてくれるタイプなのですが、あまりそれに甘えていると毎日遅くまで仕事しちゃうなと。自制する意図もあって、20時帰宅を自分に課しているんです。

羽生 お子さん、可愛い頃ですよね。

山崎 今、1歳3カ月です。溺愛しています!

羽生 ご出産は計画的だったんですか?

山崎 ずっと欲しいと思っていたんですが、主人の転職のタイミングとも調整して、授かったのが41歳の時でした。ちなみに主人は6歳下なんです。

羽生 年下婚、どうですか?

山崎 年下だからというわけではないですが、育児も家事も半々でやることを当たり前だと思っている夫であることが、とてもありがたいですね。女性が育児と仕事を長く続ける上での最重要ポイントは、「正しい夫選び」ですよ。私が子どもを産んでからどう仕事を両立していくかも一緒に考えてくれて、私の両親ともしばらく同居したいという希望も承諾してくれました。

羽生 毎日の保育園のお迎えは?

山崎 おじいちゃんとおばあちゃんです。私たちと夫婦と両親の計4人で分担して子どもを育てています。送りは私と主人が一緒に行きます。

羽生 夫婦二人だけで子育てって大変ですよね。

山崎 無理ですね。自分のキャパシティの限界を超えると思います。もし両親の助けを借りずに私たち夫婦だけで乳幼児の子育てをしようとしたら、「4時半に起きれば間に合うか?!」というレベルになります。できなくはないけれど、果たしてそれが子どもにとっても幸せで、自分たちにとっても持続可能な生活なのか。これからまたやり方は変えるかもしれませんが、今は両親に甘えています。

羽生 「働く」と「育てる」をどう両立させていていくかは、本当に大きな課題ですよね。

山崎 社内外でも女性活躍推進をテーマにした議論の場に参加することが時々ありますが、いろいろと論じている男性には「ここに出ている暇があったら家に早く帰って妻をサポートして」と言いたいです(笑)。

羽生 ごもっとも!ですね。

山崎 女性の社会進出の裏テーマは男性の家事進出。男女ともにバリバリ働き、バリバリ家のこともする。これから私たちが目指す働き方はそんな形だと思います。

羽生 結婚や出産はまだ先、という女性たちに向けてメッセージをお願いします。

山崎 結婚すること、出産することは、キャリアを諦めるポイントと考えなくていいと思います。ただし、結婚・出産に伴う家事や育児を一人の女性の中に詰め込むと破たんするので、無理なく続けるポイントはやっぱり「正しい夫選び」!

羽生 やっぱりそうですね。「正しい夫選び」セミナーを企画したらたくさん女性が集まりそうですね(笑)。今日はありがとうございました。

(取材・文/宮本恵理子 写真/鈴木愛子)