全く問題がない“完璧”な家庭はありません。子どもの成長とともに訪れる課題に全員が「チーム」として取り組み、自分達らしい家族を形成すること--それが「ファミリー・ビルディング」の考え方です。幼児教育を通して6000人以上の子どもと接し、数多くの家庭をコンサルティングしてきた山本直美さんが、悩めるデュアラー世代へアドバイスします。第11回のテーマは「帰省時のコミュニケーション」。年末年始の帰省はにぎやかで楽しい半面、家族だけの場合と勝手が違うので何だか調子が狂うことも。実家の父母や子ども達への対応やスムーズなコミュニケーションについて山本さんに聞いてみました。

 こんにちは。チャイルド・ファミリーコンサルタントの山本直美です。

 12月は帰省シーズン。パパとママ、どちらかの実家で年末年始を過ごす家庭も多いはず。わが家に暗黙の「ルール」があるのと同様、実家にもその家々のやり方がありますよね。「おうちではいつもこうしているのに、おじいちゃんのおうちではやらなくていいの?」などと子どもに聞かれて、「うーん……」と口ごもってしまうことも。帰省時に余計な衝突を増やさず、実家でも気持ち良く年末年始を迎えたいですね。

帰省時の「あるある」。こんなとき、親としてどう対応する?

【子どもへの対応】

 まず、「そのおうちのルールに従う」ことを“基本”としましょう。

 久しぶりに会うおじいちゃん、おばあちゃんに、ついついうれしくて調子に乗ってしまう子ども達。はしゃぎ過ぎて「怪獣状態」になっているのを見て、親としては「いつもはきちんとしつけているのに……」と心配になるかもしれません。

 でも、子どもにとって大好きなおじいちゃん、おばあちゃんと過ごす時間は、信頼関係を築き自己肯定感を高める時間でもあります。「日常と違う」ということをあらかじめ理解し、事前に「おじいちゃんやおばあちゃんに、おもちゃを買ってあげようかと言われたら何て言おうか?」などとお話ししてみてください。

 「やっちゃダメよ、もらっちゃダメよ」と禁止されると素直に聞けないことも、「何て言ったら喜んでくれるかなぁ?」「○○できるかな?」と提案型にしてあげると、子どもも受け入れやすくなります。

 お片付けをやらなくていい、寝る時間が遅くなる、お菓子・ゲームの時間などの制限がなくなる、など親としては困ったことが多くても、ある程度は目をつぶり、必要以上にイライラしないよう心がけましょう。

 たった数日で、しつけてきたものが消えるわけではありません。自分の家以外の場所で、子ども達も社会性を養っていますから、「その家に行けばその家のルールがある」ということを学ぶ機会でもあります。

【自分の実家の親への対応】

 自分の実家に帰ると、「実父母のやり方」と「自分達のやり方」が違ってよくケンカになるというパパ・ママの声もよく聞きます。

 今と昔では、育児のやり方も常識も、だいぶ変わってきていますね。

 例えば、トイレトレーニング。もうすぐ3歳なのになかなか完全におむつが外れないのを見て、実母に「あなたが赤ちゃんのときは1歳半でオムツ外れたわよ!」と言われ、色々指導が入って困っています……というママからのご相談もありました。

 また、自分が子どものころには禁止されていた「夜はアイスを食べてはいけない」「食事中にはテレビをつけない」「買い食いはしない」などを孫には許している姿を見て、心の中で“ずるくない? 孫には甘いんだから!”なんてことも起こるでしょう。

 立場の違いからくる行動ですから、むきになることはないと思います。どうしても言いたいことはケンカごしにならないよう、伝え方さえ気を付ければ問題ないのではないでしょうか。