上編では、ご自身が脳科学者を志したきっかけについても触れて、大いに盛り上がった中野信子さんの講演をリポートします。
中野信子さん
「なぜ70点しか取らないの?」で周囲がサーッと引いた
私は子どものころ、周りから「何か扱いにくい」という目で見られる子どもでした。自分ではそう思っていないのですが、母親さえも私と妹に対する態度が違うのです。母親は妹のことは普通にかわいがるのですが、私に対しては抵抗感を持って扱っているような感じでした。小学校に上がってからも、妹が学校で楽しくやっているのを見て、「あっちが普通なんだ。私はどこか欠落があるのではないか」という思いをずっと抱えて育ちました。
極め付きは中学時代の事件です。私には言われたことや見たものをあまり忘れないという"特殊能力”があって、テストは非常に得意だったんです。聞いたものをそのまま書けばいいわけですから。そのため、同級生があまり高い点数を取らないことを不思議に思ってしまって、うっかりそのことを口にしてしまったんです。
「授業で聞いたことをそのまま書けばいいのに、どうして70点しか取らないの?」
もう、これを聞いただけで普通の子どもは「ムッ」としますよね。でも、私はムッとするかもしれないと思わないくらい、「おかしい子」だったんです。さすがにこのときは、友達がムッとする感じや、潮が引くようにサーッとみんなの気持ちが引いていくのが目に見えました。私は言ってはいけないことを言ったということに気づきました。でも、何がいけなかったのかが分からない。
私が気づいたのは「皆は私が知らないルールを知っている」ということでした。つまりこれは、コミュニケーションのルールです。
「コミュニケーションのルールは親や先生に教えられるものではないけれど、皆は身に付けている。私も身に付けなきゃ」と焦りを感じました。それにはどうしたらいいかと子どもながらに一生懸命に考えて、人間のことを研究する学者になればそのルールも分かるに違いないと思いました。それに社会に出ずに大学にいれば、私でもなんとかなるかもしれない。その二つを満たすのが「脳の研究者」でした。このとき、私の将来は決まったようなものです。夕方本屋に行ってニューロンに関する本を買ったのを覚えています。
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- 本当に頭がいい子に育てるキーは、脳の前頭皮質にある
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