やめグセがつくというのは嘘

 例えば、土曜日に嫌な習い事があるとします。すると、金曜日くらいから、子どもは「ああ、嫌だなあ……、明日は習い事があるのか。なんで私『やりたい』なんて言っちゃったんだろう」と思い始めます。友達がやっているのを見て楽しそうだったから始めたものの、「始めてみたらつまんない。明日、熱でも出ないかなあ……」と思うこともあるでしょう。

 こういった状態が定期的に続いてしまうと、子どもにとって大きなリスクとなります。実は最近、子どものうつ病が増えています。その原因として挙げられているのが、自分をごまかして、本当はやりたくないことをやることなのです。とにかく、子どものころというのは、こういう鬱屈とした気持ちで過ごす時間は、少なければ少ないほうがいいのです。

 「今日は気持ちが良くて、いい天気! 風は心地いいし、お日様もポカポカで気持ちいい! 今日も楽しいなあ。うれしいことがいっぱいある。毎日が幸せだなあ」。こんなふうに感じられる時間が長ければ長いほど、子どもの脳が発達して、能力も伸び、性格も良くなります。

 逆に、やりたくないことを無理やりやらされると、子どもの成長にとって悪影響しかありません。嫌なことでは頑張れませんし、叱られることも増えます。能力も伸びませんし、自信もなくなります。暗い気持ちでいる時間が長くなるのは、性格形成のうえでも良くありません。

 このような悪影響を考えますと、まずは体験してみて、ダメだったら、さっさとやめてしまうのがいいと私は考えます。やめグセがつくというのは、私は嘘だと思います。迷信です。たとえ、10個の習い事をやってみて、すべてやめてしまうといったことになったとしても、11個めでピッタリとはまるものに巡り合えればいいのです。そうなると、親がやめろと言ってもやめませんから。大人も同じではないでしょうか。「やってみなければ、分からない」のです。

 結婚だって、そうですよね。「この人しかいない!」と思って結婚したのに、「あれ? こんなはずじゃなかった!」とか(笑)。大人でさえそうなのですから、子どもはもっともっと、やってみないと分からないものなんです。

 ひと昔前までなら、習い事と言っても、そんなに種類はありませんでした。習い事と言えばこれといった感じである程度決まっていました。そして、一つの習い事に懸けて、一本道を突き進む“根性”や“努力”といったものが大事だとされてきました。しかし、今は時代が違います。教室やワークショップも把握できないくらいたくさんあるのですから、どうせ合わないと分かっているものにこだわるより、新しいものにチャレンジして、子どもの可能性を試したほうがいいと思います。色々やってみれば、ピッタリ合うものに巡り合う確率も高くなります。