先日、日経BP社で小学校低学年のお子さんをお持ちの親を対象に、親野智可等さんのセミナーを実施しました。親野さんは、公立小学校で23年間、教師を務めた経験からメルマガ「『親力』で決まる子供の将来」を発行する教育評論家です。学習面を中心に小学校生活を充実したものにするために、親は子どもとどう接していくのがいいのかという、親子のコミュニケーションについてお話をお聞きしました。その内容をお伝えする本連載。9回目のテーマは「子どもに合ったベストの習い事を見つける方法」です。

子どもの1年は大人の5年に相当する

親野智可等さん
親野智可等さん

 講演をしながら全国を回っていると、よく親の皆さんから聞かれる質問があります。それは「習い事をすぐにやめてばかりいると、“やめグセ”がついてしまうのではないでしょうか?」というもの。このことについて、最近ネットニュースで書いている人もいました。「何か習い事をひとたび始めたら、続けさせなさい。そうしないと、やめグセがついてしまう」といった内容でした。

 実は、このような考え方というのは、子どもの成長のことを考えたら、非常に危険なことだと私は思っています。なぜそうなのかというと、嫌な習い事をずっと続けるということは、子どもにとっては苦しいことだからです。

 習い事でも何でも、やはり、基本的には本人がやりたいと思えることをやらせてあげたほうがいいのです。親がやらせたいことを優先するのではなく、「本人がやりたいと思っていること」「向いていそうなこと」、これを優先してください。そのほうがヤル気が出ますし、子どもも伸びます。

 しかし、自分からやりたいと言い出したとしても、途中でやめたがることもあるでしょう。実際にこういう話がありました。ある女の子が友達がやっているのを見て、お母さんに「ねえ、お母さん、私、あれやりたい」と、自分から言い出したのです。

 そこで、お母さんは「何言ってんの! どうせ、またすぐにやめちゃうんでしょ。この前もあの教室に行きたいと言うから始めたのに、3日でやめちゃったじゃない」と。すると子どもは「今度は絶対に続ける! ホントにやる」と押し問答です。そして、最終的には「本当に続けるの? じゃあ、約束だよ」と言って、指切りげんまんをして、絶対にやめないと約束させました。

 ところが、3回くらい教室に行ったところで、「やっぱりやめたい。ホントはそれほどやりたくなかった」なんて子どもが言い出しました(笑)。そこで、お母さんは怒って、「この前、約束したじゃない。このままだと、やめグセがついちゃうからダメ。1年間は続けなさい」と言いました。

 これは子どもにとっては本当に残酷な言葉です。子どもにとっての1年というのは、大人よりも感覚的にずっと長いですからね。大人が感じる1年とは訳が違います。皆さんも自分が小学生だったころのことを思い出してみてください。小学校の6年間って、とても長くありませんでしたか?

 大人になると6年間なんて、あっという間です。しかし、脳が急激に発達していく中でたくさんのことを吸収している子どもの感じる時間と、大人の感じる時間の感覚は大きく違います。ですから、子どもにとっての1年間というのは、とてつもなく長いのです。子どもにとっての1年は、皆さんの5年に相当するくらいだと思っておいたほうがいいでしょう。