先日、日経BP社で小学校低学年のお子さんをお持ちの親を対象に、親野智可等さんのセミナーを実施しました。親野さんは、公立小学校で23年間、教師を務めた経験からメルマガ「『親力』で決まる子供の将来」を発行する教育評論家です。学習面を中心に小学校生活を充実したものにするために、親は子どもとどう接していくのがいいのかという、親子のコミュニケーションについてお話を聞きました。その内容をお伝えする本連載。「親野智可等 否定的な言葉が子どもに及ぼす弊害」に続く、3回目。今回は、「親が子どもを否定的な言葉で叱ることによる弊害」について、さらに詳しく伺います。

とがめられ続けると、愛情が実感できず不信感が募る

親野智可等さん
親野智可等さん

 前回、否定的な言葉を常に浴びせかけることによる弊害が3つあるとお話ししました。1つ目は、子どもが自己肯定感が持てず、自己イメージが悪くなり、頑張ったり努力したりすることができなくなること。今回は、残りの2つについて説明したいと思います。

 「またあれをしていない!」とか、「しなきゃダメでしょ!」と言われた途端に子どもは不愉快になります。それはそうですよね。なぜなら、やっていない自分が「とがめられた」「責められた」「批判された」「非難された」と思うからです。

 そう感じた瞬間、子どもは心を閉ざしてしまいます。ガラガラッとシャッターを閉じて、もう、店じまいをしてしまうわけですね。もちろん、頭では分かっているんですよ。ママやパパが言っていることが正しいということを。でも、自分は強い口調でとがめられたり非難されているものですから、言われれば言われるほど、ますます素直になれなくなってしまうのです。

 それどころか、逆のことをやってしまいたくなってしまうこともあるでしょう。「なにくそ、ママ(パパ)が言うようにやるもんかっ!」となってしまうんですね。親がガミガミ言えば言うほど素直さがなくなって、ヤル気も喪失してしまうのです。

 さらに、ガミガミ言われ続けると、子どもの中に、ある疑念が生まれます。それは「お母さん、私のことがあまり好きじゃないんじゃないか?」とか、「お父さん、僕のこと、嫌いなのかな」といった気持ちです。この疑念から、子どもは愛情不足を感じるようになってしまい、親に対する不信感を持ってしまいます。こうなってしまうと、さらに素直になれません。必要以上に、親に対して反抗するようになります。

 皆さんはもちろん「愛があるからこそ」と思って言っていることでしょう。しかし、それが否定的な表現で、わが子をとがめるような感じであれば、愛情や信頼とは正反対のものを子どもたちは受け取ってしまう。愛情を実感できないようになってしまうのです。