「酸っぱいブドウ効果」とのダブルパンチで「嫌い」になる
もう一つの心理的な効果として挙げられるのが、「酸っぱいブドウ効果」です。イソップ童話に出てくるお話です。キツネがおいしそうなブドウを見つけます。でも、高いところにあるので、何度ジャンプしても届きません。とうとう、キツネは諦めるのですが、最後にひと言、こう言うんです。
「あのブドウは酸っぱいから、僕は食べないんだよ!」
そう言い張って自分を納得させました。これは、ブドウの価値を下げることによって、自分を保とうとする行動です。同じようなことが、子どもにも起こります。親が「また片付けをしていない! 何度言ったらわかるの!?」と叱ると、子どもは不愉快になります。そこで、自分を保つためにこう言います。
「なんでお母さんはそんなにムキになるの? 片付けなんて、そんなに大事なことじゃないんじゃないの? 人生にはもっと大事なことがあるんだから」
片付けをする行為そのものの価値を下げることによって、自分を保とうとするのです。これも全部、無意識のうちにやる行動です。親が勉強についてガミガミ言うほど、「勉強なんて、そんなに大切なことじゃないでしょ」となる。これが、酸っぱいブドウ効果です。
このように、「脳の勘違い」と「酸っぱいブドウ効果」のダブルパンチによって、親が感情的かつ否定的に叱った物事は、すべて、子どもの中で「不愉快で価値の低いもの」という位置づけになってしまうのです。
否定的な言葉は、親が使わないように心がけるしかない
ここで、否定的な言葉で強く叱ることの弊害を整理してみましょう。
以上の3つを覚えておいてください。皆さんが何気なく垂れ流している否定的な言葉というのは、実に子どもたちにとって深刻な悪影響を及ぼすのです。ところが、こういったことに親はなかなか気づかないものですよね。なぜ、親はそのことに気づかないのでしょうか? それは、結果がすぐに見えるものではないからです。
子どもは、親に叱られてもそれほど深刻に落ち込んだりしないかもしれませんし、平気な顔をしているように見えるかもしれません。何も心に響いていないのではないかと思えるほど平気だったりします。しかし、表面的にそう見えたとしても、実は本人の気づかない無意識的な部分において、大きなダメージを受けているということがあるのです。
悪影響はすぐには現れません。格闘技で言えば、ボディーブローとかローキックのようなものです。言われている本人も気づかないまま、知らず知らずのうちにダメージが溜まっていきます。そして、ダウンに至ってしまう……。
親にひどいことを言われたとき、「今、僕の自己肯定感が傷ついた」とか、「今、私は親に対する不信感を持った」などと、自分で気がつく子どもなどいるはずがありません。本人も気づかない無意識な部分で傷つくからこそ、ダメージが大きくなるのです。
このように、親の言葉に対して、子どもは無防備なのです。やはり、親が気を付けるようにするしかないということを忘れないでいただきたいと思います。
(P3のイメージ画像/鈴木愛子)