愛情不足と感じると、問題行動を起こす危険性も

 深層心理学の研究によりますと、親の愛情を実感できないまま「愛情不足」を感じている子どもは、不安でたまらない状態になります。それで、「親の愛情を確認したい」という強烈な衝動に駆られて、「愛情確認行動」に走るようになります。親は自分を愛してくれていないんじゃないかと思い、それを確かめるために、親に心配をかける行動に出てしまうのです。例えば親が心配してくれるかどうか確認しようと、危険なことをしようとします。もちろん、怪我をする確率も高まります。

 さらには、反社会的な行動をするようにもなります。万引きをしたり、火遊びをしたり、落書きをしたりする。あるいは、モノを壊すとか、ペットや年下の子、クラスの弱い子をいじめてしまう、などなど。

 これが、思春期になると、もっと深刻になります。深夜徘徊をしたり、スマホやパソコンで出会い系サイトにハマってしまって、良からぬ行動に出てしまうといった危険性もあります。

 その結果、親は心配しますよね。愛情確認行動をする子どもというのは、親が心配する姿を見たいという衝動に駆られている。「こんなに私のことを心配してくれている。愛されている証拠だ。ああ、良かった!」と確認したいのです。

 もちろん、この愛情確認行動というのは意識的にやるものではありません。ほとんどが無意識のうちに、しかも衝動的にやってしまうのです。いわゆる非行行為と言われるような、良からぬ行為の土台になるものの原因としては、このような愛情不足や親に対する不信感が大部分を占めていると言われています。これが、2つ目の弊害です。

つり橋効果の影響で「勉強が不愉快」と思うようになる

 さて、とがめるように叱り続けることによる弊害の、最後の3つ目とは何でしょうか? いつも否定的に叱られ続けると、その叱られている物事が嫌いになってしまう、ということです。例えば片付けについて叱られていると、片付けが嫌いになってしまいますし、勉強について叱られていると、ますます勉強が嫌いになります。

 なぜ、そうなるのかと言いますと、ここでは2つの心理的な効果が働いてしまうからです。まず、一つは「脳の勘違い」のお話です。例えば「つり橋効果」という言葉は、皆さんも聞いたことがあるかもしれませんが、もともとは心理学用語で、脳科学の分野でも全く同じ結論に達しているものです。

 例えば、適齢期の男性が意中の女性をデートに誘うときに、つり橋を一緒に渡った後に告白すると成功率が高くなると言われます。つり橋は揺れるので怖いものです。すると、彼女あるいは彼の心臓はドキドキします。そこで、脳が勘違いするのです。「あれ? 私、今、ドキドキしている。もしかして、この人が好きなのかも!?」と。勝手に脳が勘違いをして、恋愛が成就する確率が統計的に見ても有意な数字で上がるそうです。

 脳はこういったように、日常の中でいつも勘違いをし続けています。ですから、一緒にジェットコースターに乗ろうとか、お化け屋敷に行こうとか、そういったことでドキドキさせて相手の心をつかもうといったことを、恋をする男女は本能的に理解しているわけですよね(笑)。

 「脳の勘違い」について、他にも分かりやすい例を挙げると、口角を上げてニッコリすると良いというお話があります。皆さん、聞いたことがありませんか? そうしてみると、脳が、「あれ? 今、私は楽しいんだ。幸せホルモンを出さなきゃ!」となって、一生懸命に幸せホルモンを出すようになるのです。そのうち、実際に幸せな感覚になってくる。これも脳の勘違いから起こることです。つまらないと思っていても、ニッコリ笑って口角を上げていると、だんだんと楽しくなってくる。

 こんな話を、ある脳科学者の講演で聞いたときに、私は、「本当にそうだな。これは、勉強でも同じだな」と思いました。勉強でも否定的なことばかり言われ続けていると、大人でもそうですが、子どもはもっと不愉快になります。親の否定的な言葉が不愉快なのです。つまり、勉強自体に不愉快を感じたのではなく、親の否定的な言葉が不愉快だったということ。でも、その不愉快な言葉が勉強に関してのことだったので、脳が勘違いをして「勉強って不愉快だな」となってしまうのです。