自分でマニキュアを塗る人。ネイルサロンに行く人。あるいは爪やすりで整えるだけの人。磨いて、自然な艶だけを出す人──人それぞれ何でもいいけど、清潔にしておきたいなという気持ちはある。

 思い返せばわたしは指先にこちょこちょしたものがついていたり、色合いとかデザインとか考えるのが好きで見てるだけでテンションのあがる時期があったので、一カ月半に一度、せっせとジェルネイルを施しにサロンに通ったものだった。しかしそれも、すべて出産前の話だ。

行き届いた人の爪を見て、自分の手をひっこめてしまう

 サロンなんてもう数年も行っていない。ジェルネイルが今、いくらするのかもわからない。ずっとむき出しのかさかさで、キーボードを叩くときに気になるから年中を通して深爪だし、まるで恐竜の足を思わせるような指先で仕事をしてる日々。あるいは、じーっと見ていると竹中直人さんの頭を思いだしてしまう、ネイキッド感というか……。

 節も太くて、もともとコンプレックスありまくりの手と指なんだけど、さすがに40年も生きてると慣れもあって、誰にも会わないふだんは気にならない。でも、たまーに仕事で人に会ったりして、色々が行き届いたきれいな爪を見てしまうと「あっ」と思ってしまうのだ。さっとこう、手をひっこめたくなるあの感じ……。

 まったく指とか肌とか体型とか、比較にまつわるこの不自由さって何なんだろうってつくづく思うけど、でもまあ、「爪、ちょっとちゃんとしようかな」程度には、刺激されてしまうのだった。みんなはどう?

 しかし、以前のようにサロンに行く時間なんか、どこにもない。