4歳になるひとり息子を、芥川賞作家夫婦で育てながら超多忙な日々を送る川上未映子さん。仕事、お金、子育て、美容。健康、暮らし、人間関係。しあわせやよろこびだけでなく、おそろしいこと不安なこと、そして思わず、びん詰めならぬゴン詰めたくなる世間のあれこれを綴ります。人気コラム『川上未映子のびんづめ日記』シーズン2、全16回でお届けする第2回目のテーマは、「ネイル」。未映子さん撮影のお宝フォトも公開します!

 毎日くたくたになるまで働いて、それで育児もやってる母親が、自分の美容に手間暇かけるって今さらながら難しいことだよなあと今日もフレシネを飲みながら考えた。

心は母でも、見た目は「父」になってしまわないか(焦)

 美容って、何なんですかね。

 余裕のあるときは、手軽に使えるシートパックとかもたくさんあるし、楽しみながら保湿したりとかそういうこともできるけど、そうじゃないときはもう放ったらかしで、忙しい毎日はそれが続いていくことになる。溜まっていく洗濯物とか散らかっていく部屋と、母の顔はおんなじなのである。それである日突然に、肌が硬く、ごわごわになっていることに気がついて、このままだと心は母かも知れないが見た目は父親になるんじゃないか、みたいな感じで、でも面倒だからもういいか、このまま流されていくか、いや、ちょっとくらい引き返すかってとこで悩んで、わたしはまだ、かろうじて焦りを感じるキワにいるような、そんなあんばいなのだった。

 で、肌が一番にのバロメーターではあるのだけれど、肌と同等に「その人の状態」を示すのが「爪」なのだ。例えば、すっぴんでいわゆるボロボロ状態の女友だちでも、ふと目についた爪がちゃんとしていれば「ああ、基本この人は自分というものにまだ意識を持っているのだ」という感想を持つのよね。