A. 民法においては、被相続人(亡くなった人)の子どもが相続の開始(被相続人が死亡したとき)以前に死亡したときには、その者の直系卑属(子どもなど)がこれを代襲して相続人となるものと定めています。つまり、亡くなった人の子どもが、亡くなった親と同時、あるいは親よりも先に死亡した場合に、その子どもの子ども、すなわち被相続人の孫が、親に代わって祖父母の相続人となると定めているのです。
孫の立場からすれば、父親が生きていればまず父親が祖父の遺産を相続し、それを自分も継承できたという期待がありますから、代襲相続はその期待を保護する制度であると言えます。
人は、出生して初めて権利能力(法律上の権利義務の主体となることができる資格)を有するので、まだ出生していない胎児には、権利能力が認められないことになりそうです。しかし、相続人が死亡した時点で既に妊娠しており、やがて生まれてくることが予想される胎児を、権利能力がないからといって相続から除外してしまうことには違和感があるでしょう。
そこで、民法は相続について、胎児は既に生まれたものとみなすと定めています。そして、この「既に生まれたものとみなす」との規定の意味については、胎児の間は相続の能力はないけれども、胎児が生きて生まれたときには、相続開始時まで遡って相続したものと認める、というものです。つまり、胎児が胎児として相続人となるわけではなく、胎児が生きて生まれた場合に、遡って相続人だったことにすると いうことです。ちなみに、この規定は、胎児が生きて生まれたときにだけ適用があるので、死産のときには初めから胎児がいなかったのと同様に扱われます。
少しややこしくなってきましたね。つまり、被相続人が亡くなったときにまだ胎児であった子も相続人となる場合がある、とご理解いただければいいと思います。