障害児を持つ母親のフルタイム勤務はわずか5%。健常児を持つ親の7分の1
初めに登壇したのが、病児保育、障害児保育などの事業に取り組む、認定NPO法人フローレンス代表理事の駒崎氏。まず、駒崎氏から日本の障害児保育が抱える現状と課題について説明があった。
駒崎 我々が障害児保育に取り組み始めたきっかけは、重度の障害がある子どもを持つ世田谷区在住の育休中の母親からの「復職を考えているが受け入れてくれる保育園がない」という悲鳴から。世田谷区はおろか、東京中を探しても、医療的ケアを必要とする子どもを受け入れてくれる保育園はなかったのです。
医療的ケアとは、「たんの吸引」や「経管栄養」、「酸素吸入」などの医療的援助のこと。こうしたデバイスによって生きることができる子どもが、年々増加しているという。NICUの入院実数は右肩上がりで、2011年から2013年の2年間で6000人増。わずか600gで生まれた命も助けることができる日本の周産期医療水準の高さゆえだが、医療的ケアが必要な子(=医療的ケア児)は確実に増えている。駒崎氏は次のように問題を指摘する。
駒崎 医療的ケア児はひとたびNICUを退院すると、地域に行き場がなくなります。保育園には受け入れてもらえない、幼稚園からも断られてしまう。通所施設も親子同伴が基本です。共働き家庭では、母親が仕事を辞めるケースがほとんどです。
障害のある子を持つ親の就労状況は非常に悪い。フルタイムで働く母親はわずか5%で、健常児を持つ母親の7分の1。重度の障害を持つ子どもの母親にいたっては、フルタイム勤務がほぼゼロなのが実態であるという。「重い障害を持つ子どもが生まれたら、親が仕事を辞めるのは当たり前」という考えが根強い。
駒崎 障害児を育てる家庭の母子家庭率・父子家庭率も、健常児を持つ家庭と比べると高いです。世帯年収は下がり、経済状況はますます悪化します。それにもかかわらず、障害児を持つ家庭に対する社会的支援は非常に脆弱です。