③ 【計算が遅くて、負けず嫌いな子】

 計算が遅いというのは中学受験ではとても不利です。しかし、負けず嫌いな性格はプラスに出るので、それをうまく利用した親の声かけが重要ポイントになります。

 計算を素早く正確に解くようにするには、それなりの練習量が必要です。でも、たくさん練習しても、いっこうに正確にならない子どもがいます。

 その原因の一つに「短期記憶力」があります。数字を写し取るときや暗算をするときに、一時的に数字を覚えておく力です。この力が弱いと、写し間違いをしたり、くり上がりやくり下がりを間違うことになります。また、効率的な計算もうまくいきません。この数字の短期記憶力と、言葉の短期記憶力は強く結びついています。普段の生活の中で、言葉の短期記憶力を鍛えることで、計算の正確さを高めることができます。

 例えば、お使いを頼むときに、一つのものではなく、「何と何を2つ、何と何を3つ買ってきてね」といったように複数のものを頼んでみます。このように、短期間だけしっかりと覚えておくトレーニングをしてあげてください。

 計算が遅いというのは、中学受験においては明らかに不利にはたらきます。にもかかわらず負けず嫌いな性格というのは、本人にとってはかなりつらい状況とも言えます。こういう子には、まずは自信を持たせてあげることが大事です。

 例えば、計算を速くできるようにさせたいなら、こういう言い方をしてみてください。

 「あなたは計算は速くないけれど、一つひとつ丁寧に確認しながらやるところがいいと思うよ。でも、テストは時間が決まっているから、速く解く練習もしていこうね」

 このように、その子の良いところをほめ、その上でアドバイスをするというやり方が効果的です。間違っても、「あなたは計算が遅いから、このドリルをやりなさい!」といった言い方はしないこと。負けず嫌いな子というのは、自分の欠点を指摘された時点で、反発心を持ってしまうからです。

 このタイプの子は、本当は「もっと成績を上げたい」「上のクラスに行きたい」と思っています。しかし、現実はそれに伴う学力がまだ身に付いていない。だから、とても焦っているのです。ですから、まずはその子を安心させてあげる言葉をかけてあげましょう。できていないところを指摘するのではなく、「あなたはこことここはできているね。ここまでできているのだから、あとここをやれば大丈夫だよ」といった言い方をしてあげると、不安が和らぎ、「よし頑張ろう!」と立ち向かえるようになります。

④ 【計算が遅くて、マイペースな子】

 計算が遅くてマイペースな子というのは、正直あまり中学受験向きではありません。でも、難関校を狙うのではなく、その子の身の丈にあった受験を望んでいるのであれば、それに対応した大手塾もあります。市進や栄光ゼミナールなどです。また、日能研なら上位層から下位層まで幅広い学力層に対応しているので、無理なく受験勉強を進めることができます。

 ただし、どんなレベルであっても、中学受験をするのであれば基礎学力は不可欠です。基礎学力というのは「読み・書き・そろばん」です。そして、この基礎学力をしっかり身に付けていけば学力は伸びていきます。

 のんびりとしたマイペースな性格は決して悪いわけではありませんが、中学受験では不利にはたらく場合もあります。そこで、日ごろの学習にゲーム性を取り入れて競争させると面白がるかもしれません。例えば、計算練習をするときに、「じゃあ、どっちが速く計算できるかお母さんと競争してみようか!」と誘ってみると、案外楽しく取り組むものです。こうやって遊びを入れると「速く解くのは楽しいな」と感じるようになり、計算のスピードもアップしていきます。

 いかがでしょうか?

 こうして見ていくと、お子さんにとって合う塾、合わない塾があることが分かりますよね。ところが現実には、お子さんの性格を無視して、ブランド名だけで塾を選んでしまうご家庭が多くあります。また、「仲のいいお友達が通っているから」「家の近所にあるから」と安易に選んでしまうことも多いですね。

 その結果、冒頭に挙げたような悩みを抱える親子を生み出してしまっているのです。

 「塾を選ぶ際には、まずお子さんの性格をよく見極めること。その上で、志望校に強い塾を選びましょう。マイペースな性格のお子さんには、毎月、成績でクラス分けをするようなSAPIXはなじめないでしょう。また、負けず嫌いな性格であっても、御三家のような難関校を狙っているわけではないというのであれば、中学受験塾で最も進度が早く、難易度の高いSAPIXに通わせる必要はないのです」

昔の四谷大塚を知っているパパ・ママ世代は要注意!

 さて、ここでもう一つ注意点があります。前の座標の四谷大塚に注目してみてください。

 「四谷大塚といえば、DUAL世代のお父さん・お母さん達が小学生のころ、最も支持されていた中学受験塾だったと思います。オリジナルテキストの『予習シリーズ』はとてもよくできていて、以前は多くの受験生がこのテキストを使って受験勉強をしていました。テキストのタイトルにあるように、子どもが自分で予習して理解できる内容だったからです」

 「ところが近年、その中身が大きく変わり、難易度が上がりました。4年生の算数でいえば、SAPIXよりも難しい内容になっています。そして今は子どもどころか、親ですら予習しなければ理解できないような内容になっていて、誰のための『予習』なのか分からないテキストになっています。ですから同じ名前のテキストでも、ひと昔前とは大きく変わっていることを理解しておきましょう」

 次回は、中学受験におけるシーン別での親の関わり方を紹介します。

(撮影/花井智子)

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