大家族に何の抵抗もない各世代

 もともと多くの兄弟姉妹の中で育った家庭の中の各世代は、大家族が当たり前のこととして育っている。まずその大前提があって、さらに出産開始年齢が非常に早い傾向にあるため<平均23.1歳(2008年)、日本は30.3歳(2012年)>(※5)、おじいさん・おばあさんといってもまだ年齢は比較的若い。また他方年の離れた兄・姉は既にかなり成長しているので、幼児の面倒くらいは見ることができる。同居する親戚も多く、叔父叔母、いとこなどの子育ての担い手となる人材は複合家族の家の中に少なからずいる。

 それから、これはフィリピンの人々の大きな特徴だが、男性も家事・育児に関してあまり抵抗がない傾向が顕著にあるので、「手の空いている者がその時点の子育てを担う」というのが当たり前になっている。

ラッセルさんは運転が得意。スクーターでの子どもたちの学校の送り迎え、後ろに見えているヤマネ家の車での買物等の手伝い、おじいさん所有のペディキャブでのバナナの運搬の手伝いと、一日大忙し。
ラッセルさんは運転が得意。スクーターでの子どもたちの学校の送り迎え、後ろに見えているヤマネ家の車での買物等の手伝い、おじいさん所有のペディキャブでのバナナの運搬の手伝いと、一日大忙し。

 さてここでそんな代表的な大家族にご登場願おう。マニラの郊外ブラカン州にお住まいの新日系家庭のヤマネさん一家である。フィリピンに移住した新日系一世の英雄さんは奥さんのロビリンさんが大学生のときにマニラで知り合い結婚、現地のライフスタイルが気に入った英雄さんは他の在住日本人とは一線を画し、フィリピン・スタイルの大家族を形成して生活している。

 50歳で結婚されたにもかかわらず、現在1歳の幼児を含む3人のお子さんをもうけたが、奥さんはまだまだ子どもがほしいのだとか。しかしこの大家族の写真を見ていると、確かに年齢からくる将来の不安などは家族の明るさとエネルギーの前にかすんでしまうのかもしれない。このヤマネさん一家でも、有名ホテルの現地採用の営業職で忙しい英雄さんと、今は休職中だが赤ちゃんに手のかかる奥さんに代わり、同居するロビリンさんのいとこのジェッサさん、同じくまたいとこのラッセルさんや、英雄さんとあまり歳は変わらずバナナの卸小売業をしているおじいちゃん・おばあちゃんが子どもたちの保育や通学を都合によって交代で行っている。

ヤマネさん一家は現在同居しているのは総勢10人だが、それぞれの実家の事情や学校の事情で人数はいつも変化する。現在もこのメンバー以外にも「通い」でヤマネ家の家事や、おじいさんのバナナの卸を手伝いに来るメンバーもいる。
ヤマネさん一家は現在同居しているのは総勢10人だが、それぞれの実家の事情や学校の事情で人数はいつも変化する。現在もこのメンバー以外にも「通い」でヤマネ家の家事や、おじいさんのバナナの卸を手伝いに来るメンバーもいる。