2017年に全小学校のトイレが洋式化

 町田市は小1プロブレムの解消にも積極的だ。その対策のひとつが小学校のトイレの洋式化だ。「家庭や幼稚園、保育園のトイレはほぼ洋式なので、入学して和式のトイレだと使えない子どもがいます。それに小学校のトイレは5K(暗い、汚い、臭い、怖い、壊れている)と言われ、学校でトイレに行かない子どもがいます。これは健康にもかかわる問題です」(石阪市長)。2017年度で市内小中学校全62校中60校で、ほぼすべてのトイレが洋式化される。「パステル調の色使いで明るい雰囲気になっています。床もドライなので、子どもたちにも掃除がしやすくなりました」(同)

 親としては校舎の耐震性も気になるところだ。「町田市では全小中学校の耐震化工事が2010年12月に終わっています。あの東日本大震災の3カ月前です。校舎の耐震化は市長選挙の公約でもありましたので、就任してすぐに計画を立ち上げました。はじめは10年計画だったのですが、それでは長すぎる、子どもたちの命は何より大事だからと、5年計画に短縮したのが功を奏しました」(石阪市長)

 このように、トイレの洋式化が間もなく終了し、耐震工事も5年以上前に完了している。町田市の小学校はハード面では万全だ。

 ソフト面でも小1プロブレム対策の一環として、幼児期の教育と児童期の教育を円滑に接続させる「幼保小連携推進モデル事業」を実施している。具体的には、幼稚園・保育園・小学校の代表がグループを作り、市内5地区で児童や職員が交流を行っている。

 給食の食物アレルギー対応にも力を注いでいる。入学前から面談を実施し、食物アレルギー情報を把握し、一人一人に対応した除去食を栄養士の管理のもと、各学校の調理室で調理しているという。

 保育園や学校の給食で除去対応をしてもらうためには、かかりつけ医に「生活管理指導表」を記入してもらう必要がある。通常、それには費用がかかるが、町田市では医師会協力のもと、市が助成をしている。万が一、アナフィラキシーショックを起こした時のために、訓練用のエピペン(アナフィラキシー症状の進行を緩和しショックを防ぐための自己注射薬)を使用し、事故を想定した訓練も行っている。「命にかかわることですから、決して手を抜いてはいけないところです。自画自賛になりますが町田市は小児科医も栄養士も教師もがんばっていますよ」(石阪市長)

自然の中で試行錯誤し、五感をフル活用する体験が気軽に

 豊かな自然を生かした、町田市ならではの子育て支援策もある。そのひとつが市内6カ所の公園内などで開催されている「冒険遊び場」。ここでは子どもたちが自然の中で、火を使ったり、木に登ったり、秘密基地を作るなど、自分の責任で自由に遊べる。常駐するプレーリーダーと共に小枝やマッチで火を起こし、マシュマロを焼いて食べるなど、さまざまな体験ができる。

芹ヶ谷公園内に設置された「せりがや冒険遊び場」。水曜~日曜までプレーリーダーが常駐し、子どもたちを見守る。のこぎりを使った木工作なども楽しめる
芹ヶ谷公園内に設置された「せりがや冒険遊び場」。水曜~日曜までプレーリーダーが常駐し、子どもたちを見守る。のこぎりを使った木工作なども楽しめる

 自然の中で試行錯誤し、五感をフル活用する体験は都会暮らしではなかなか得られない。そうした仕掛けが暮らしのすぐそばにあるのは大きな魅力だ。「冒険遊び場には、優等生ではない子も受け入れてくれる雰囲気があります。プレーリーダーは子どもたちの良き相談相手になっているようです」(石阪市長)

 また、育休中や乳幼児のいるデュアラーママに好評なのが市内5カ所にある大型児童センターだ。親子の集う場としてはもちろん、中学・高校生の意見も取り入れ、0歳から18歳までの子どもたちがそれぞれに楽しめる施設になっている。

町田駅から徒歩圏に出来た「子どもセンターまあち」。乳幼児ルームのほか、音楽スタジオ、ダンススタジオ、学習スペース、少人数が集えるスペースが用意されている
町田駅から徒歩圏に出来た「子どもセンターまあち」。乳幼児ルームのほか、音楽スタジオ、ダンススタジオ、学習スペース、少人数が集えるスペースが用意されている

 待機児童や学童への支援、遊び場の充実など子育て世代を手厚く応援している町田市。実は、こうした施策を次々と実現させている石阪市長自身も、子育てに関する著書(『忙しいパパでもできる! 子育てなんとかなるブック』)があるほど、子育てには熱い思いがある。

 「実は我が家も共働きだったのですが、子どもが小さいころ、私は『夕飯は家族で食べる』ということを主義にしていました。その理由の一つが妻がゆっくりと食事をとれるようにと言うことです。それに子どもがかわいくてかわいくて。妻に子育てを独占させるなんてもったいないという思いから、育児も何でもやりました。著書はそんな我が家の育児経験を書いたものです」(石阪市長)

 ハードな共働き時代を経験してきた市長も、町田市の出身だという。「平日は都心へ働きに行き、休日は子どもと近くの公園でほっと息を抜き、疲れを取る。町田市はそんな暮らしにはぴったりの環境です。今後も共働きファミリーの子育てを応援していきたいですね」(同)

「妻に子育てを独占させるなんてもったいないという思いから、育児も何でもやりました」
「妻に子育てを独占させるなんてもったいないという思いから、育児も何でもやりました」