園長経験者が入園前の「保活」を応援

 3~5歳の待機児童はほぼゼロになり、「3歳の壁」はなくなった町田市だが、0~2歳児に関しては、まだゼロになっていない。しかし、この年齢についても、着々と受入人数を増やしている。

 「2016年10月には先ほど紹介した『20年間期間限定認可保育所』の制度を活用した保育園1園が開園しました。2017年4月には小規模保育事業所が2園新規開設し、幼稚園型認定こども園も1園増える予定です。これによって保育施設の定員は214人増えます」と石阪市長。

 さらに、駅から離れた保育園の空き定員を活用する計画も進んでいる。これは町田駅周辺に送迎保育ステーションを設け、駅から離れた園に子どもをバスで送り届けることで、待機児童と定員の空きの両方を解消するものだ。「2017年10月からの実施を予定しています。チャイルドシート付きの車で1歳児から乗れるようにするので、最も人数が多い1歳の待機児童解消にもつながるでしょう」(石阪市長)

 町田市は、働くママにとっては切実な、入園前の「保活」応援にも力を入れている。それが、公立保育園の園長経験者が務める「保育コンシェルジュ」。園長経験者が直接相談に乗ってくれるので、ママにとっては心強い。

 2015年から活動を開始し、子どもを保育園に預けたいという人の相談に乗っている。今年度からは各地域の子育て相談センターなどに出かけ「保活ミニ講座」も始めた。「第一子の場合、保育園の選び方のポイントもわからずとまどうママは多い。そうするとつい、見た目や評判、利便性で選びがちですが、子どもの個性や家庭の事情に最適な保育園に出会えるお手伝いをしています」(石阪市長)

 保育園児ひとりに関わる経費は1年間で162万円という。このうち約20万円は保育料として保護者が負担し、残りを市が負担する。定員100人の保育園が1つできると新たに1億4000万円が必要になる計算だ。「この出費をどう考えるか。否定的な人もいるかもしれませんね。しかし、私はこれこそが町田市の将来への投資だと考えています。街の活力を生み出すには、若い人にたくさん住んでもらうのが一番です。共働きの子育て世帯を応援することで、町田市に多くの人に来てもらい、街をより活性化させたいと思っています」(石阪市長)

早朝や長期休みに預けられる、給食付きの「学童一時預かり」

 町田市は、小学生を持つデュアラーママにも優しい街だ。学童保育クラブは、年度初めの一斉入会期間に希望すれば全員入れる「全入」を実現している。2校を除き、学童クラブが学校の敷地内か隣接しているので、移動時の心配も少ない。

 さらに、2016年には「学童一時預かり」という制度が始まった。これは、一部の保育園、認定こども園、幼稚園で登校前の朝や放課後、夏休みなどの長期休み中に小学生を預かるという町田市独自の取り組みである。学童保育クラブに通いながら利用することもできる。

 学童保育クラブは3年生までだが、学童一時預かりは1年生から6年生までなので、卒クラブ後の受け皿にもなる。実費負担で、給食やおやつが出るので長期休みに弁当を作る手間も不要だ。19時まで延長保育ができる園もある。

 「学童一時預かりは学童保育クラブではカバーできない部分を補うために生まれた制度です。親が先に出勤する家庭からは、小学校の開門前の時間に子どもを預ける場所が欲しいという声が以前からありました。保育園は早朝から開いていますから、そこを利用しようということです。また、幼児と学童の兄弟がいる場合、保育園の学童預かりを利用すればお迎えが1か所で済みます。子どもにとっては、通いなれた保育園などに就学後も通えるというメリットがあります」と石阪市長は語る。今年度は6つの保育園、幼稚園で実施し、今後も増やしていく予定だという。