「これまで私立に行くことでしか受けられなかった中高一貫教育を、公立の授業料で受けられる」と人気の公立中高一貫校。現在、都内には公立の中高一貫校が11校あり、設立理念など共通する部分はあるものの、学校ごとのカラーや教育方針は少しずつ異なります。「せっかく入学したのに、校風がわが子に合わなかった……」といったことがないよう、志望校がどのような学校なのかを事前に調べておきたいものです。

合格実績等の数値やパンフレット、ホームページだけではなかなか見えてこない各学校の特長をもっと詳しく知りたい!と計6校の校長と生徒に取材した「人気都立中高一貫校 校長&生徒会長インタビュー特集」。来年度受験を控えたご家庭はもちろん、これから志望校選びを始めるご家庭は、人気の背景と受検倍率、適性検査の傾向などを盛り込んだ【公立中高一貫校の今 特集】と併せて志望校選びや受検対策にお役立てください。

【人気都立中高一貫校 校長&生徒会長インタビュー特集】
第1回 小石川 東大合格2ケタ 理数・国際教育に尽力
第2回 桜修館 自主性を大切に、論理力・表現力を学ぶ
第3回 両国 体力・道徳力も重視 総合的な人間力を磨く
第4回 白鷗 日本の伝統文化を継承し、国際社会で花開く ←今回はココ
第5回 立川国際 帰国生2割 国公立後期まで伸びる学力
第6回 武蔵 国公立大97人合格 探究・協働・貢献の心

 「都立白鷗高等学校・附属中学校」は、東京都で最初にできた公立中高一貫校。明治21年に東京府高等女学校として創立されて以降、東京の女子教育のリーダー的存在でした。戦後に共学校となり、一貫校となった現在は、浅草にほど近い立地ならではの地域と密接な伝統文化の継承と国際的なリーダーの育成を両輪とした教育を実施。女子校として60年、共学校として68年、128年の歴史の中で培った「開拓精神」を理念とした教育活動の中で、伝統文化の継承を学ぶ学校設定科目の「日本文化概論」を独自で設け、囲碁や将棋、華道などを学びます。若くして第一線で活躍する日本文化の継承者などの採用枠も設けているのも特徴。

 国際教育では、ネーティブの外国人が教師を務める「PIE(プレゼンテーション・イン・イングリッシュ)」で、より実践的な英語を学びます。「辞書は友達、予習は命」を合言葉に毎日の学習を大切にし、塾に行かなくても学校の学習で大学受験に対応できる力を育成。平成28年度は東大現役合格者が5人と、進学実績も注目を集めています。

東京・浅草という文化に恵まれた立地を生かし、伝統文化を継承する心を育成

DUAL編集部 (「ドンドンドーン、ドンドンドーン」と、放課後の和太鼓部の練習音をBGMに取材スタート)。和太鼓や長唄三味線、百人一首という公立の中学・高校では珍しい部活動があるように、教育活動でも「日本の伝統文化理解教育」が際立つのが白鷗の特色だと思います。どのような取り組みをされているのでしょうか。

善本校長(以下、敬称略) 今年4月、私が赴任した当初に高校3年生の生徒全員と面接をしたのですが、「知らない人に白鷗について紹介するときにどう説明するか」と聞きましたところ、「日本の伝統文化を大切にしている学校」と答える生徒が多く、生徒自身もそれを実感していることが分かりました。浅草・上野の地にあることを生かし、入学当初から地域の伝統文化と深く関わる機会を設けているのが白鷗の特徴です。

東京都立白鷗高等学校・附属中学校 校長 善本久子さん
東京都立白鷗高等学校・附属中学校 校長 善本久子さん

 具体的には、中学1年の「伝統文化体験」で古くから提灯を作る地元の伝統的なお店で提灯づくりを体験したり、音楽の授業では全員バチを購入し三味線を習ったり、中3では京都・奈良の修学旅行に行きます。修学旅行で訪れる比叡山では本校のためだけの特別プログラムがあり、今では希少となった日本の伝統文化に身近に触れられる機会を多く持ちます。

 また、高校生になると週に1回、「人間と社会」という地域と連携した伝統文化の学習に取り組んでいきます。例えば、台東区では多くの伝統行事が今も受け継がれており、4月には隅田公園で行われる「流鏑馬」、6月中頃には鳥越神社の例大祭として行われる「鳥越祭」でそれぞれに参加し、地域での役割をいただいています。地域の町内会主催の餅つきなどにも参加し、生徒が餅をついて近隣の方にふるまう手伝いをしたり、皮なめしが盛んな地域でもありますので、若手デザイナーが伝統的なものを生かしながら物づくりをする「モノマチ」イベントではボランティア活動をしたり、地域の行事にも積極的に参加していますね。

―― 「日本文化概論」という独自の科目もあります。

 高校2年からは、カリキュラムの中に週1で「日本文化概論」の授業が入ってきます。これは囲碁、将棋、華道、茶道、書道、作法、日本の伝統音楽という全7つの中から生徒が希望したものを体験できるもの。様々な世界の一線で活躍されるプロの方が指導してくださる機会があり、日本が世界に誇る文化を身近に感じられる、わが校自慢の授業です。

【次のページからの内容】
・中1~2は東校舎、中3~高3は西校舎。中2で責任感を持ち、ぐんと伸びる
・平成30年から外国籍生徒・帰国生枠開始 日本という基軸がより生きる環境に
・2泊3日のプレゼン合宿 日本の伝統文化とグローバル化を融合
・【生徒会メンバーインタビュー】志望理由と感想、合格の秘訣、キャリアビジョン
・「辞書は友達、予習は命」の真実 周りの意識も高いから、頑張れる