目黒区の閑静な住宅街に位置する「都立桜修館中等教育学校」。区立図書館と文化ホールに隣接し、緑豊かな周辺環境で、文化的な空気に包まれています。同校の大きな特徴は、学校設定科目として、「国語で論理を学ぶ」「数学で論理を学ぶ」を置き、論理的な思考力の育成に力を入れていること。5年(高校2年)の研究論文作成に向けて、学年ごとにカリキュラムを設定し、段階的に研究の姿勢を身に付けます。大切にしているのは、「思考力・判断力・表現力」という3つの力。大学入試を突破する学力はもちろんのこと、それ以降に伸びていく力の育成までを見据えています。
平成27年度(平成28年実績)は卒業生150人中、国公立大学の合格者数が42人(浪人含む51人)と、進学実績の良さが人気の理由で、平成26年度には女子で10倍を超える応募倍率を記録。平成27年度(男子6.06/女子8.15)、平成28年度(男子5.95/女子7.48)と近年倍率は落ち着いてきていますが、依然、特に女子からの人気が高い学校といえます。
生徒の自主性を身に付くことに重きを置く学校
DUAL編集部 通常の国語、数学の授業とは別に、学校設定科目として「国語で論理を学ぶ」「数学で論理を学ぶ」という論理的学習に力を入れていますね。どんな内容なのですか?
金田校長(以下、敬称略) 国語、数学の普通科目に加えて、前期課程の1年から3年は「国語で論理を学ぶ」「数学で論理を学ぶ」授業を1週間交替で2時間ずつ、必修科目として設けています。「論理的学習」というと難しく聞こえるかもしれませんが、これは文章や相手の話を把握し、自分の考えを道筋立ててまとめるだけに終わらず、それを分かりやすい言葉で周囲が納得できるように説明・発表することを目標に「論理を学ぶ」姿勢を体系的に身に付けていきます。
例えば、「国語で論理を学ぶ」の場合、1年は新聞記事を読み、その中の主張を自分でまとめて自分の言葉で他の人達に分かりやすく伝えることで、ものの見方や考え方を広げようとする姿勢を育てます。「数学で論理を学ぶ」のほうは、色々なパズルや証明問題など身近なものを題材に、具体的な事象を調べることを通し、数量関係を理解しながら論理的に考察する能力を育成していきます。
―― 「論理を学ぶ」の授業には、各教科の先生を2人必ず配置しているそうですね。
金田 毎週、国語か数学のどちらかの「論理を学ぶ」の授業があるのですが、1クラス約40人の生徒から出てくるいろんな意見をできる限り丁寧に拾うため、一人の教師が主に説明を担い、もう一人が教室内を巡回し生徒の声を引き出すことで手厚くサポートしています。週2時間の授業や発表の機会を通じて、日常的に論理的思考を巡らす習慣が自然と身に付くと考えています。
論理的学習では、5年になるとジャンルを問わず、自分で自由にテーマを決め、5000字の研究論文を書くのが課題となります。しかし、いきなり「やりなさい」と言ってもできるものではありません。そのために、前期課程から徐々に訓練を積み重ねます。まず3年間は1600字の論文を書くことを課題とし、1年は「地域研究」、2年は「平和学習」、3年は「日本の伝統文化」など学年ごとのテーマに沿って、考えまとめる力をつけていきます。