「都立小石川中等教育学校」は、SSH(スーパーサイエンスハイスクール/将来の国際的な科学技術関係の人材を育成するため、先進的な理数教育を実施する高等学校などを文部科学省が指定するもの)に指定され、理数教育が充実した学校。科学的な考察や探究心の育成に欠かせない「実験」を重視し、5つの実験室を配置。1、2年生の理科の授業では、実に7割もの時間を実験・観察に充てています。一方、都内で10校のみ選ばれる「東京グローバル10」にも指定され、国際理解教育も充実。習熟度別の少人数クラス編成を全学年にて実施するなど英語授業の先進的な取り組みや積極的な国際交流を行っています。
さらに、「小石川教養主義」を掲げ、5年生(高校2年生)までの全員が、文系・理系の枠にとらわれることなく、すべての科目を学習。偏りなく、広く深い知識に裏付けられた、幅広い教養を育みます。
「立志」「開拓」「創作」の精神を大切に、160人160通りの生き方を応援したい
DUAL編集部 開校当初から都立中高一貫校のトップ校として、受検家庭や教育界から熱い視線を注がれています。教育において、最も大切にしていることは何でしょうか。
奈良本校長(以下、敬称略) 大正7年の創立以来、98年にわたり変わらず継承されてきた理念が、「立志」「開拓」「創作」。これは本校が開校以来、「自ら志を立て(立志)、自分が進む道を自ら切り拓き(開拓)、新しい文化を創り出す(創作)」ことのできる人材の育成に努めているということです。
学歴の高さや知識の多さだけでは、真の知性は育ちません。本校では「育てたい生徒像」を3つ掲げていまして、一つは、「現状に満足せず、高い志をもち、自らの個性と能力を自ら開拓できる生徒」。次に、「国際社会に生きる日本人として、幅広い教養と豊かな感性及び高い語学力を身に付けた生徒」。最後に、「自然科学など様々な場面・分野で活躍できるリーダーを目指す志の高い生徒」と、自分を奮い立たせ、志の高い人間になるような教育を軸にしています。
―― 3つの柱の志高い教育理念を掲げながら、「国際物理オリンピック」では世界大会銅メダル、「化学グランプリ」の国内本選金賞、「日本ジュニア数学オリンピック」の銀賞など、国際的な科学オリンピックへ挑戦し、輝かしい成績の数々を収められています。一方、東京大学への現役合格者は2年連続で9人。平成27年度は現浪合わせて14人と教育界でも大きな話題になりました。東大合格者数増加のために、何か学校を挙げての取り組みなどはされているのでしょうか。
奈良本 東大合格者は今後も出てくればいいなと思っていますけれど、そのために他のことをやめて東大合格に集中するということはないですね。教育目標はあくまでも先に挙げた3つの生徒像で、「1学年160人いれば、160通りの生き方をバックアップする」という方針なんです。例えば、「東工大でなくて、東大へ行ったらどうですか」と、そういう指導はしないということです。ただ、このままでは難しいんじゃないかなという成績だけれど、東大を受けたいという子には、がんばりなさい、と(笑)。「行ける大学」ではなくて、「行きたいと思う大学」へ行けるようになるための努力を徹底しなさいと言っています。子ども達のやる気や探究心を育てる地道な教育活動が、結果的に数字になって表れているならとてもうれしいです。