4歳になるひとり息子を、芥川賞作家夫婦で育てながら超多忙な日々を送る川上未映子さん。仕事、お金、子育て、美容。健康、暮らし、人間関係。しあわせやよろこびだけでなく、おそろしいこと不安なこと、そして思わず、びん詰めならぬゴン詰めたくなる世間のあれこれを綴ります。人気コラム『川上未映子のびんづめ日記』シーズン2(シーズン1はこちら)、全16回でお届けする第1回目のテーマは、「40歳になったわたし」です。

 時間の経つのが、なんでこんなに早いかよ……と、今日もフレシネを飲んで考えた。ここ、日経DUALでエッセイの連載をさせていただいていたのなんてついこのあいだ、なんて思っていたのに、季節は巡り、恐ろしいことにすでに一年が経とうとしているんである。

 この一年を振り返って、どんなことがあったのかなーと生活の色々を思いだそうとしたのだけれど、具体的なことが何ひとつ思いだせないことが、さらに恐ろしい。それなりにあれこれあったはずなのに、つねに今日という日をこなすのが精一杯であるために、頭がぜんぶそっちにかかりきりになっているのか、具体的なことが何にも思いだせないのだ。記憶として、蓄積されていないのである。なりふりかまわず走ってるときには自分の足元も風景も見ることができないものだけれど、そんな感じなのだろうか。

 とはいえ、このあいだにわたしは39歳から40歳になった。

加齢による肉体の変化を日々感じております

 自分の年齢なのに、これもいまひとつ実感がない。38歳ぐらいから年齢を聞かれると、「もうすぐ40です」みたいに答えていたせいもあるのかもしれないけれど、「数字が変わったよね」ぐらいの印象しか持てないのだ。30歳になるときは、まだ「おお、30代か」みたいな感じ、あったような気がするのに。

 何の感慨も持てないいちばんの理由は、日々、加齢による肉体の変化を味わっているからかもしれない。

仕事場の窓から。こんな青空を見ても「わたしはいつ、あそこに行くんだろう……」みたいなことを思ったり。っていうか、天国っぽいところに収まるんじゃないかと思ってるところが、どうもね……。
仕事場の窓から。こんな青空を見ても「わたしはいつ、あそこに行くんだろう……」みたいなことを思ったり。っていうか、天国っぽいところに収まるんじゃないかと思ってるところが、どうもね……。