子どもの教育や将来を考え、親子で日本を飛び出す海外移住に興味を持つ人は多いでしょう。グローバルライフプランを現実的に考えるためにあらかじめ知っておきたい海外移住の情報。海外で会社員として働く形態には、主に「海外駐在」と「現地採用」の2種類があります。

この連載では、シンガポール在住ファイナンシャル・プランナー(FP)花輪陽子さんが、現地採用の落とし穴や気になる出産、子育て事情を、海外で実際に子育てをしているお金のプロの視点から解説。これまでは、シンガポールにおける共働きライフプラン戦略を、日本と比較しながら「家事・育児」と「教育環境」について検証してきました。今回は、「物価」「仕事」「社会保障」の面に着目し、メリット・デメリットを見ていきます。5つのカテゴリをまとめた比較表(最終ページ)も親子海外移住の検討材料の一助にしてください。

 ファイナンシャル・プランナー(FP)の花輪陽子です。今回はシンガポールでの生活を現実的に考えるために、物価、仕事、社会保障面から日本との比較をしていきます。

 連載1回目「憧れの海外生活 移住貧乏にならないために」でも紹介したように、シンガポールでは家賃、医療費、教育費などの費用が高いため、一般的な家庭であれば、夫婦共働きを選択するか、単身の場合はシェアハウスでの移住が現実的です。

家賃相場は東京超え がん闘病の治療に数カ月で約1億かかる場合も

 家賃はシンガポールの端のほうに行けばファミリー向けの物件で20万円程度の物件も探すことができますが、日本人に人気なエリアだと40万円前後になることも。3カ月に一度のエアコンのメンテナンスも義務づけられているためにメンテナンス代も年4万円前後かかります。

 医療費は政府系の病院に行けば安価ですが、緊急以外は待たなければいけないこともあるようです。がんなどですぐに検査をして治療を受けたいとなると私立のほうが早いのですが、私立の場合は医療費が高額になります。検査や手術の内容にもよりますが、1泊で数十万円かかり、がんの闘病のために数カ月で1億近くかかったという話も聞いたことがあります。

 私立は自由診療のために最先端の治療を受けることも可能なのですが、海外旅行保険もしくは現地の民間の医療保険でしっかり医療費をカバーできるようにしておくことが必須です。もしくは日本に戻って健康保険に加入をして治療を受けるのが経済的でしょう。日本では公的医療保険が手厚く、医療費が高額になった場合も「高額療養費」で一定の金額を超えた分は払い戻しを受けることができるからです。

 ジム・ロジャーズ氏のようなお金持ちで最先端の治療を望む人はシンガポールで治療をするのも一つの選択肢ですが、一般的な家庭であれば日本で治療をするほうが金銭的にも現実的かと思います。

シンガポールのファミリー向けコンドミニアムは一般的に20万~40万円が相場。高額な医療費に備えた保険加入も欠かせない
シンガポールのファミリー向けコンドミニアムは一般的に20万~40万円が相場。高額な医療費に備えた保険加入も欠かせない