日経DUAL×日経新聞の自治体調査「共働き子育てしやすい街ランキング」。東京を除く全国編で1位になったのは千葉県浦安市でした。東京都に隣接している浦安市ですが、待機児童が少なく、その待機児童をさらに減らすべく保育所を増設しています。ほかにも「小1の壁」につながりかねない学童保育の預かり時間を長くしていたり、保育士確保へも様々な対策をしていたり、無料の一時預かりサービスがあったりと、「子育てしやすい街」へ多くの施策を打ち出しているようです。1998年から浦安市の市長を務める松崎秀樹氏にインタビューしました。今回は後編です。

【日経DUAL×日本経済新聞 自治体調査】
第1回 共働き子育てしやすい街2016 総合ランキング
第2回 共働き子育てしやすい街 上位50自治体発表
第3回 保育園の予約制度/育休2年 自治体はどう考える
第4回 新宿区長「待機児童ゼロへ 用地や保育士確保へ動く」
第5回 新宿区長「夫婦交代で分割して育休を取れるといい」
第6回 浦安市長「600人の母さんの声を聞き、分かったこと」
第7回 浦安市長「子育て施策は小さな歯車である自治体から」 ←今回はココ
第8回 出生率2.81に急上昇 岡山・奈義町の子育て施策

子育て政策は最優先。年間30億円を拠出

日経DUAL編集部 順序を付けるようなことではないのかもしれないですが、子育て政策というのは現在市長の中で何番目ですか。

松崎秀樹市長(以下、敬称略) 最優先ですよ。保育所の整備費用などとは別に、今は30億の少子化対策基金を設置して、少子化対策事業の予算として使っています。特に小さいお子さんの問題は待ったなしですよね。1年2年経ったらすぐ就学してしまうんですから。そういったことも含めて即効性のある事業をどこまで打てるかということに、このお金を使っています。

 浦安市の財源は個人の市民税が中心です。皆さんディズニーからお金をもらってると思ってるだろうけど(笑)。

―― 浦安市としてここが自慢、子育て関連の政策でもいいんですが、土地柄なども含めて、ここが他とは違うぞ、というのはありますか。

松崎 人材ですね。フィンランドでは、とてもたくさんの保健師が妊娠中から子どもの就学前まで、さらにその後の夫婦の関係まで、ケアしていると聞いています。最低でも約10年、じっくりと、保健師一人当たり70~100人のお子さんを担当しているんだそうです。

 そこで、大日向雅美先生(注:恵泉女学園大学学長、心理学者)に相談して、平成18年から「子育て・家族支援者養成講座」というものをスタートしました。3カ月研修を受けてもらうと三級の資格が取れます。三級だけで440人くらい資格者がいます。テキスト代だけ2000円くらいかかりますが、他は無料です。

 基本的には子育てを終えて、自分の経験で若いお母さんたちや家庭をサポートしたいという人が応募してくれます。児童育成クラブ(学童保育)の指導員の人たちにも参加してもらっています。スキルアップした二級の保有者も180人くらいいます。産前産後のサポーター、ケアマネジャー、保育ママなど、市が委託をして、お金をお支払いしながらその仕事に就いていただいています。

<次ページからの内容>
・学童は19時半まで。保育士確保へ3つの施策
・発達障害健診や婚活の場も、市主体で
・小さな歯車である自治体から、少子化対策を発信したい