バイクとしょっぱいラーメンの思い出は「ホープ軒」から

丼の縁にも背脂が。粗挽きの胡椒が合います
丼の縁にも背脂が。粗挽きの胡椒が合います

 「父さんが結婚する前にバイクで真夜中によく食べに行ったラーメン、行ってみないか」と長男を誘って30年ぶりに訪れたのが千駄ヶ谷「ホープ軒」。

 年中無休24時間営業だから、突然ラーメンが食べたくなってもバイクで駆け付ければ、いつでも食べられるのが魅力だった。ぱったりと食べなくなったけれど、店の前を通るたびに気にはなっていた。一階の立ち食いスタイルは今も昔も変わらない。豚の背脂のコクと甘みが効いた塩味のスープが特徴。でき上がりに煮込んだ背脂を振りかける動作から「背脂チャッチャ系」と呼ばれるラーメン店の老舗の一つだ。

 「これが背脂か」とひとりごちながら食べる長男。うーん、味は変わってないけど、何か足りないな、そうだおろしニンニク!

 カウンターには刻みねぎもおろしニンニクもタップリ置いてあり、好きなだけ入れられる。長男にもニンニクを勧める。しょっぱかったスープがまろやかになった。「うん、これだね」と二人で納得。

 他にも深夜に行ったラーメン店は、恵比寿のちに広尾に移った「らーめん香月」、結婚してから引っ越した堀切菖蒲園近くの「らーめん弁慶」など。食べているうちにどんどん当時の思い出がよみがえってくるが、思い出を語っても息子達がのってこないのは分かっている。「香月」も「弁慶」も背脂チャッチャ系で、「ホープ軒」出身者の店と知ったのは最近。知らずに好んで食べていたというわけだ。

 長男に食べ終わった感想を聞くと、「おいしいけど、やっぱ、しょっぱいよね」と。そうだね、父さんもそう思うよ、今はね。でも、記憶の中の「ホープ軒」のラーメンスープは黄金色に輝いていたよ。最後の言葉はのみ込んだ。青春のしょっぱい思い出はラーメンの味とともによみがえるのだ

カメラを向けるとホームラン軒と勘違いして野球ポーズを連発する漫画家小栗。やはり黄色が目立つ
カメラを向けるとホームラン軒と勘違いして野球ポーズを連発する漫画家小栗。やはり黄色が目立つ