ラーメン界のラスボス「二郎」に挑む兄弟
「父さん、オレ、ジロリアンにはなれないよ」。高校生の次男が「ラーメン二郎」に初参戦した後の感想だ。
思い起こせば10年前、同じ仙川の「二郎」で長男はハデに討ち死にした。ラーメン大好き中学生を自認していた長男、自信満々で大盛りを注文。列の中から「お兄ちゃん、多いよ」という声がかかり、「大丈夫です」と答えてカウンターについたが、前に置かれた丼を見て、彼が息をのんだのが分かった。
丼からはみ出さんばかりの麺の塊、スープなんて見えません。その上にげんこつのような煮豚がドカン、ドカンと2個、さらにゆでキャベツ、もやしの山。丼の縁から20センチ以上盛り上がっている。全人未踏の岩壁に無謀にもハーケンを打ち込む初心者クライマーのように麺の塊にがむしゃらに箸を入れるも、いっこうに減る気配がない。というか、むしろ増えている! 麺がスープを吸って膨らんでいるのだ。すでに食べ終わった私が席を立つころには、もう半分泣きながら食べていた。
「己を知らない自分の未熟さに腹が立ったのと、ラーメンを残す罪悪感にいたたまれなかったよね」と振り返る。そんなエピソードを何度か聞かされていた次男は慎重に普通盛りを注文したが、途中で「父さん、麺少し食べてくんない?」と丼を差し出してきた。そして、なんとか食べ終わった感想が冒頭の一言。
「ラーメン二郎」に魅せられて、足しげく通う愛好家をジロリアンと呼ぶが、そんな不思議な魅力を持ったラーメン店が地元にあるのはラーメン好きとしては誇らしい気がしていた。しかも長男によれば、ディープな「二郎」の中でも最深部に位置するのが仙川店らしい。ならば、兄弟そろって負けても仕方がない、役者が違うのだ。
ちなみに私は10年前も今回も完食。「父さん結構すごいんじゃね」と見直されました。