演奏会は何度も行くうちに楽しみ方の深みが増していく
―― そんな面白そうなレクチャーに気軽に参加できる西宮の皆さんが羨ましいです。では、最後に。子どもの教育のためならお金に糸目をつけないで、よいものに触れさせたい、というパパやママも少なくないのですが、お金のかけどころで親としてやりがちな失敗に関してアドバイスをいただけますか?
佐渡 演奏会というのは、ある程度、料金が一つの目安になることは確かです。人気のある楽団のコンサートチケットは高額ですし、海外の演奏家を呼んでくるとお金がかかります。
僕はよく「演奏会はワインみたいなものだ」とお話ししています。例えば、地球の裏側にある産地のワインが飲みたいとか、世界最高峰のワインを味わってみたいという心理はきっと誰しもにあるでしょう。もちろん、僕にもあります。でも、1本15万円もするワインを毎月飲んでいるか、といえばそれはないですよね。一生に一回くらいはそんな高価なワインを飲んでみたいと思う人もいるかもしれませんが、1万円、5000円で美味しいワインを探して楽しむ方法もあるわけです。そしてだんだん、「いや1000円も出せば意外とおいしいワインが飲めるよ」ということも分かってくる。これが通になっていく楽しみでしょう。お金に糸目をつけないという感覚が一体どれくらいなのかは分かりませんが、15万円のワインを毎回飲むことがいいとは限らない。15万円もする演奏会のチケットはありませんから、これはあくまで例えですけれども。
自分の娘に関して言うなら、例えばチケットが3万円もするような高額の演奏会には「自分で稼ぐようになってから自分のお金で行きなさい」と言いますね。ただ、そこに行きたくなるような前段階の体験は親としてさせておいてあげたいとは思います。この絵本が皆さんのお子さんにとって、オーケストラ音楽の世界に続く扉を開くきっかけになればうれしいです。
(ライター/砂塚美穂、撮影/西山和希)