日経DUAL×日経新聞の自治体調査「共働き子育てしやすい街ランキング」。総合ランキングで1位となったのは東京都新宿区でした。23区の中では比較的待機児童が少なく、保育料が抑えられていることなどが高評価でした。DUALでは2年前から新宿区長を務める吉住健一氏にインタビューしました。2回に分けて内容をお伝えします。

【日経DUAL×日本経済新聞 自治体調査】
第1回 共働き子育てしやすい街2016 総合ランキング
第2回 共働き子育てしやすい街 上位50自治体発表
第3回 保育園の予約制度/育休2年 自治体はどう考える
第4回 新宿区長「待機児童ゼロへ 用地や保育士確保へ動く」 ←今回はココ
第5回 新宿区長「夫婦交代で分割して育休を取れるといい」
第6回 浦安市長「600人の母親の声を聞き分かったこと」
第7回 浦安市長「子育て施策は小さな歯車である自治体から」
第8回 出生率2.81に急上昇 岡山・奈義町の子育て施策

都心は保育所の用地確保が困難。再開発では先回りして調査

日経DUAL編集部 新宿区はDUAL×日経新聞の「共働き子育てしやすい街」総合1位となりました。新宿区の子育て支援に関する現状について教えてください。

吉住健一区長(以下、敬称略) 新宿区では、子どもの出生数が急激に増えています。そのため、以前から保育所などの待機児童解消に取り組んでおり、平成27年度には認可保育園の定員を大幅に増やすことができました。

 そもそも新宿区をはじめ、都心区は土地が狭くて価格が高いので場所を見つけるのが困難です。保育園を経営している人に「自分で土地を見つけ、建物を建てて、人を見つけてやってください」とお願いすると、開園するまでのハードルが高くなります。そこで、新宿区内にある事務所や店舗などの空き物件から保育園に転用可能な物件をうまくマッチングさせ、家賃補助などをしながら保育所を増やしてきた、というのがここ2年くらいの取り組みです。

 そのほか、既存の区立保育園を民営化する際に、建物を改装し、区で別の用途に使っていたところを保育園として使えるように床面積を増やして定員を拡大したり、認証保育所を認可保育園にしたりすることで、認可保育園の数を増やしてきました。

 また、大規模な再開発を行う場合には、開発の交渉の中で地域貢献をお願いしています。ポイント制になっていて、保育所や高齢者施設など、いくつかの協力ジャンルから複数選んで作ってもらい、そのポイント数によって補助金を増やす仕組みです。

 1000世帯入るようなマンションの場合、初日に完売することも多く、引越ししてくる人にアンケートを取ってもらっています。例えば、これから出産をするつもりか、0歳~5歳の子どもがいるか、保育園と幼稚園どちらを目指すのか、などを事前に聞いてもらうことで、再開発の中でどれくらいの規模の保育所を作ればいいか協議をする際に参考にしています。

 実際、再開発で新たに保育所を作るときに、既に住んでいる人の需要で保育の供給を満たしてしまうことが分かったんです。そのため、取り壊す予定だった中規模な保育園を改装してきれいにし、再開発内にできる認定こども園の分園として継続するようにしたこともあります。

新宿区長・吉住健一氏
新宿区長・吉住健一氏

<次ページからの内容>
・来年度には待機児童ゼロを達成見込み。0~2歳の枠を増やす
・学童保育は19時まで。学童機能付きの放課後子どもひろばも
・木の温もりを感じられる誕生祝い品、妊婦向けには子育て応援品をプレゼント