「困っている人を助ける、当たり前のことをできる人がやる。それだけ」
「急にがんになることも、髪の毛が生えなくなることも、どんなことも起こり得る。そんなことを、みんな他人事と思っているから焦るんです。急に自分の身に起こることにリアクションもできない」と渡辺さんは話します。
確かに私も思い当たることがあります。友人のことです。
私ががんになったときに、連絡を取らなくなった友人が何人かいました。でもそれは連絡を取りたくなかったわけではなく、何と言ってあげたらいいのか分からなくて連絡ができなかったようです。
友人の気持ちも分からなくはありません。でも私は、そのとき寂しくて疎外感を感じました。大変なときこそ、何も言わなくていいから寄り添ってほしかった。抗がん剤治療中の私は、自分に自信がなく本音を伝えることはできませんでしたが、寂しく突き放されたような理不尽な思いは覚えています。今はそんな気持ちも、表現したほうがいいと思えるようになりました。
そんな話をすると、渡辺さんは言いました。
「あ、僕なら『そう、それは大変ね。僕に何かできることがあれば言ってね』って、言いますね。周囲の人には、今まで通りにしてください。ご本人には、できることがあれば手伝いますよって。昔の日本にあった近所同士で助け合うようなことを自然とやればいいんです。困っている人を助ける、当たり前のことをできる人がやる。それだけです」
社会貢献したいから、できることをやる。僕達がやりたいから。
JHDACの渡辺さんの志はブレない。これからも、へアドネーションのウエーブは広がり続けることでしょう。そして、ボランティアや家族の在り方にも問題提起していく団体になると思いました。
(文・写真/太田由紀子)