「自分はアウトサイダーだ」という感覚は、実は誰にでもある
―― ヘイマンさんはお子さんを持つお父さんですが、製作する作品を選ぶときや、製作中に、父親であることが判断に反映されることはありますか?
ヘイマン 父親であることが反映されているかどうかは分かりませんが、ストーリーを選ぶときは、とにかく自分が心から共感できるものを選んでいます。頭よりも心ですね。頭で考えてしまったら、没頭することができませんから。
選んでいるときは気づいていなかったのですが、今思うと僕が選んできた作品はすべて「アウトサイダー」が登場する話なんです。私は父親であり、妻も子どもも愛しているし、友達も大好きだし、幸運な人生を送っていると思います。でも、時には孤独を感じることがあります。「自分は誰にも理解してもらえない、アウトサイダーだ」と感じる。そんな瞬間って、実は誰にでもあるのではないでしょうか。
英国のEU離脱や、トランプ氏が大統領に選ばれた今の時代には特に、「どんなことにも可能性があるんだ」ということを伝えられる、皆さんが共感できるストーリーを選びたい。それによって、人とは違う誰かをも祝福することができたらと思います。
今回、日本に来ることができて、私は本当に嬉しいです。非常に多くのことを学べますし、日本の皆さんから大きな影響をいただいて帰国することができます。日本と英国は違う国で、使う言語も異なりますが、共通の要素はあります。400人くらいの人が映画館で一緒に映画を見ると、経験と感情を共有することができる。それぞれ違う人間でも、同じところはたくさんあるんです。私はこれまでそれを映画で表現してきましたし、これからもそうしていきたいと思っています。もしかすると、ここには私が父親であることが何かしら反映されているのかもしれません。
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インタビュー後、ヘイマンさんはスマホで動画を見せてくれながら、「僕の8歳の息子は『ファンタスティック・ビースト』に出演しているんですよ」と教えてくれました。魔法動物のデミガイズが透明になってリンゴを食べる横で、キャンディーをなめている男の子がヘイマンさんの息子さんだそうです。「“ステージパパ”になる気はないのですが、今回は息子のほうから『出たい!』と言われました。でも、息子は『同じ演技を繰り返すのが退屈だ』って(笑)。彼のせいではなく、20回くらい同じシーンを撮ることになったのでね」と、目尻を下げながら語っていました。
『ハリー・ポッター』と同じ魔法世界の新しい物語。かつてホグワーツ魔法魔術学校の生徒だった、おっちょこちょいで人見知りの魔法使いニュート・スキャマンダー(エディ・レッドメイン)。魔法生物を見つけて記録を取るために、世界中を旅する魔法動物学者となったニュートは、ニューヨークを訪れます。ある日、大切にしている魔法のトランクを人間(マグル=米国では“ノーマジ”と呼ぶ)のジェイコブ(ダン・フォグラー)のものと取り違えられ、魔法動物達が街に逃げ出してしまいます。
MACUSA(アメリカ合衆国魔法議会)で働いている魔法使いのティナ(キャサリン・ウォーターストン)は、その様子を目撃し、ニュートの魔法動物を探す手伝いをする羽目に。
ティナの妹で、人の心を読むことができる魔法使いのクイニー(アリソン・スドル)も協力する中、彼らは人間界と魔法界を股に掛けた、ある大事件に巻き込まれていきます……。
ポケットに入るニュートの相棒、キュートなボウトラックルや、飛ぶと嵐を呼ぶといわれているサンダーバードなど、面白い魔法動物の姿に、映画を見た子ども達は大喜びすること請け合いです。ヘイマンさんが込めたメッセージに共感しながら、この冬は『ファンタスティック・ビースト』を親子で楽しんで見てくださいね!
(取材・文/清水久美子、撮影/花井智子)