亡くなる前に子どもがウィッグを着ける日を思い描いていた
一番印象に残ったメッセージをお聞きしました。
ウィッグの順番待ちをしていた家に連絡をすると、母親から「待っていた子どもは、もう亡くなった」と返答されたそうです。「間に合わなかった、力になれなかった」と無念な思いでいると、思いがけずお礼を言われました。
「つらいことの多い闘病生活の中で、その子はウィッグをもらったら、こんなことをしようあんなことをしようと将来に希望を抱いていた。そんな気持ちになれたことに感謝します」と。
「そう言われて喜ぶこともできず、考えさせられました。言葉で表現できない。活動の意味も考えました。ウィッグを通じての活動だが、それだけではない。心にまで及ぶんです」と、渡辺さんは言います。
このへアドネーションが、人の心を動かしたり、様々な立場や思いを持つ人のアクションを起こすきっかけになっていっていたりすることに驚くそうです。
――「下」編では、実際にウィッグを受け取ったドニーの家族を紹介します。
(文・写真/太田由紀子)