日経DUALでは「待ったなしの少子化問題」と、内閣府も推進する「ワークライフバランスを保ちながら生産性高く働くための働き方改革」という2つの視点で優秀な企業を応援する取り組みとして、「共働き子育てしやすい企業グランプリ 2016」調査を今年初めて実施しました。【共働き子育てしやすい企業ランキング特集】第8回となるこの記事では、特別奨励賞に輝いたダイキン工業の各施策について詳しく解説していきます。

【共働き子育てしやすい企業ランキング特集】
第1回 「共働き子育てしやすい企業2016」20社発表!
第2回 「共働き子育てしやすい企業&街2016」表彰式
第3回 「共働き子育てしやすい企業2016」全質問項目
第4回 「共働き子育てしやすい企業2016」評価ポイント
第5回 「共働き子育てしやすい街2016」受賞者に聞く
第6回 サントリー育児中社員の「フルモード化」加速の理由
第7回 丸井 市場の変化に対応!「社内の多様化」に本気
第8回 ダイキン工業 両立支援は事業グローバル化への道 ←今回はココ

<ダイキン工業株式会社>
創業/1924年 本社/大阪府大阪市 正社員数/8003人(女性比率は約14.8%)(2016年8月31日現在)
空調や化学、電子システムなど事業は広範囲にわたる。最近では、利益率の高い省エネエアコンの生産・販売に力を入れ、4期連続の最高益を見込む。

「育児中社員」が対象の「3種類の在宅勤務」

 「共働き子育てしやすい企業ランキング」特別奨励賞の残る1社は、ダイキン工業。女性比率が14.8%と男性中心の組織ながらも、共働き視点がそこかしこに見受けられるという意外性も高評価につながった要因だ。

 まず特徴的なのが、育児と仕事を両立している社員を対象に用意されている「3種類の在宅勤務」。「フェース・トゥ・フェースのコミュニケーションや、チームでの仕事の進め方を原則としており、現時点では在宅勤務を全社員ではなく、仕事と育児を両立する社員に限定している。今後対象の拡大も可能性あり」(同社)。この制度の詳細は下記の通り。

① 育児休暇からの早期復帰を促すための「週4回までの在宅勤務」

社内では育休からの早期復帰支援を推奨しており、柔軟な勤務形態や育児サービス費用の補助拡大等を実施してきた。しかし、生後6カ月未満の授乳・離乳食期は親によるケアも時間も要するので、「早期復帰したいが両立できるか不安」という声もあったため、早期復帰を支援するための働き方として在宅勤務制度を導入
・生後6カ月未満での早期復帰者を対象に、子どもが1歳に達するまでの間、週4回まで自宅で勤務することを可能にした。
・通勤に時間を使わず、育児の時間を確保することで、育休からの早期復帰を支援している。

② 短時間勤務から通常勤務(フルタイム勤務)への早期転換を促すための「週1回までの在宅勤務」

・育休復帰後は短時間勤務からスタートする人が多いが、後にフルタイムに転換する際、「子どもと接する時間が短くなるため躊躇する」という声があった。そこで、フルタイムであっても在宅勤務によって、週に1度は育児の時間をより多く確保し、家庭とのバランスを保ちながら働けるようにするための制度を導入。
・自宅で集中して業務を行うことで、生産性向上も目指す。
・共働きもしくは母子家庭・父子家庭で小学校6年生までの子どもがいるフルタイム勤務者対象。

③ 「働く時間と場所の自由度」を上げる「スポット的な在宅勤務」

・ベビーシッターや育児サービス費用補助などサポートの制度は整っているが、授乳・離乳食期の乳児やアレルギーなどの事情で親が自らケアする必要があるなど、就業時間外の業務が困難なケースもある。
・そこで、帰宅後あるいは出社前に自宅でスポット的に働くことで、責任を持って業務をやり遂げられるよう支援するため導入。

 在宅勤務のために新たに環境を整備したわけではないが、以下の仕組みを活用している。

・会社のパソコンを自宅に持ち帰り、専用ソフトを通じて会社ネットワークにアクセスする(イントラネット、メール、データサーバを閲覧可で、オフィスと変わらず仕事ができる)。
・BYOD(私的デバイスの活用)により、個人所有のパソコンで仕事をすることも可能。
・電話会議、ウェブ会議システムを活用し、自宅から会議や打ち合わせに参加可能。
・「週1回までの在宅勤務」「週4回までの在宅勤務」の労働時間管理は、みなし労働を適用。自律的に労働時間管理、業務管理ができる社員であることが前提であるため、特に在宅勤務中の作業を職場から管理したり、始業時間・終業時間を会社に都度報告させたりしておらず、個人の裁量に任せている。業務内容とアウトプットについては上司に事前・事後で必ず報告することをルール化している。

 3種類の在宅勤務の制度は、2016年1月に制度化されたばかりで、現在の利用者は男女合計35人。毎週定期的に在宅勤務を実施している人もいれば、必要に応じて1カ月に1~2回のみ実施している人もいるなど、業務や個人事情に合わせてそれぞれ柔軟に利用されている。利用者からは、「往復の通勤時間が削減でき、その時間を育児・家事に充てることができるため、仕事と育児のバランスが取れ、それがモチベーションアップにつながっている」という声が多い。また、「自宅で集中して資料作成などに取り組めることにより、生産性が上がった」という声も多い。