日経DUALでは「待ったなしの少子化問題」と、内閣府も推進する「ワークライフバランスを保ちながら生産性高く働くための働き方改革」という2つの視点で優秀な企業を応援する取り組みとして、「共働き子育てしやすい企業グランプリ 2016」調査を今年初めて実施しました。【共働き子育てしやすい企業ランキング特集】第6回となるこの記事では、初代グランプリに輝いたサントリーホールディングスの各施策について詳しく解説していきます。

【共働き子育てしやすい企業ランキング特集】
第1回 「共働き子育てしやすい企業2016」20社発表!
第2回 「共働き子育てしやすい企業&街2016」表彰式
第3回 「共働き子育てしやすい企業2016」全質問項目
第4回 「共働き子育てしやすい企業2016」評価ポイント
第5回 「共働き子育てしやすい街2016」受賞者に聞く
第6回 サントリー育児中社員の「フルモード化」加速の理由 ←今回はココ
第7回 丸井 市場の変化に対応!「社内の多様化」に本気
第8回 ダイキン工業 両立支援は事業グローバル化への道

<サントリーホールディングス株式会社>
創業/1899年 本社/大阪府大阪市 正社員数(サントリーホールディングス(株)籍)/5029人(男女比は約8:2)(2016年9月1日現在)
東京都港区台場に「サントリーワールドヘッドクォーターズ」を置く。2009年に持株会社制に移行。酒類、清涼飲料をはじめ、健康食品、化粧品、外食など幅広い事業分野を手掛ける。近年は海外の飲料・食品メーカーの買収も進め、海外展開を加速している。

調査票に唯一「フルモード化」というキーワードを明記した会社

ダイバーシティ推進室室長・弥富洋子さん
ダイバーシティ推進室室長・弥富洋子さん

 日経DUALの「共働き子育てしやすい企業ランキング」、初代グランプリとなったサントリーホールディングス。日経DUAL編集部が最も注目したのは「フルモード化」というキーワードだ。会社は育児中社員に対して「制度を利用し柔軟な働き方をすることで、フルタイム勤務ができる」というメッセージを明確に打ち出し、社員側もそれにポジティブに応じていることが分かる。

 産育休を取得している社員の復職前には、上司と社員による「復職前面談」が行われ、復職後の働き方や緊急時のサポート体制などを情報共有。復職を申請する際に、上司から人事にその面談内容を報告する。さらに、毎年秋には復職者が必ず参加しなければならない「復職後フォローアップセミナー」を実施。この場で改めて会社からの期待や先輩社員の事例紹介を伝え、参加者同士でグループワークを行い、本人の悩みを解決し、「フルモード化」を推進している。

 このセミナーに参加することにより、復職後の働き方にも変化が生じている。2015年のセミナー参加時点では、短時間勤務者が64%、フルタイム(フレックス・時差勤務を含む)が36%だったのに対し、セミナー受講1年後に行ったアンケートでは、短時間勤務が25%、フルタイム(フレックス・時差勤務を含む)が75%という回答が得られた。つまり、フルモード化が順調に進んでいるわけだ。

 一般的に、育児中社員がなかなかフルタイム勤務に移行できない理由として、「フルタイム勤務に戻すと、長時間残業を受け入れざるを得なくなり、両立が大変になる」という不安があるといわれている。つまり残業をしなくて済む“保険”のために、時短で勤務をしている人は多い。実際は、フルタイムの勤務時間と大して変わらない働き方をしていても。

 特に小さな子どもを抱える社員にとっては、保育園のお迎えやその後の夕食準備、入浴、寝かしつけといった「夜の育児」のために、残業はできるだけ避けたいところだ。

 しかし、サントリーでは全社員の残業時間削減に力を入れることで、育児中社員でも心おきなく仕事と育児に邁進できる環境を整えようとしている。その表れの一つがこれだ。メンバーの通常人事考課に「時間生産性」という評価項目を設け、マネジャーは業務計画で部署目標を立案し、評価している。人事評価に時間当たりの生産性という項目を明記しているのは珍しく、先進的だといえる。