最初の手術。翌々日にはテレビ番組の収録へ

 2011年5月。腫瘍が小さかったので、しこりを中心に周囲の組織を取る温存手術を受けました。手術中に、リンパ節への転移がないか調べる生検も。術後に痛みはそれほど感じず、翌々日には退院。自宅に帰って夕食の買い物に行き、洗濯物を干しました。退院の翌々日には、テレビ番組の収録へ。夜は、夫や知人と経営する鉄板焼きのお店にも立ちました。

―― 家事に仕事に、動き回っていましたね。心身はきつくなかったのですか。

生稲 わが家は洗濯を干すところが低かったので、良かった。家事はリハビリになるので、無理がなければやったほうがいいそうです。仕事のときは、やはり体を切ると動きが制限されるので、商品を紹介するのにドキドキ。痛いときもありましたが、言っていないからばれないように必死でした。

 「嘘をついて仕事をしている」って思うと、精神的にきつかった。「隠し事をする」というのは、誰でもつらいですよね。吐き出してしまうほうが楽です。番組のスタッフに黙っているのが、申し訳ない。笑顔で仕事して、1人になると気持ちがコロコロ変わり、「死んでしまうかもしれない」と不安でいっぱいになる。その落差がジェットコースターみたいで、精神的に良かったり悪かったり、自分を保つのがつらかった。でも公表しないというのは自分で選んだやり方だから、笑顔で頑張らなきゃいけないって思っていました。

 ですが、「私がいることで番組が成り立つ」と感じると、元気づけられて、闘病にはプラスになりました。がんに限らず、大病をした人にとって心の支えになるのは、自分が必要とされているという気持ちを持つことです。