日本人生徒の「科学への意欲」は57カ国で最低水準
日立製作所役員待遇フェローの小泉英明さん
ここに衝撃的なデータがあります。2006年に経済協力開発機構(OECD)が57カ国の15歳男女40万人以上へ実施したPISA調査の結果です。
「科学を学んでいるときは楽しい」「科学を学ぶことに興味がある」「科学の本を読むのは好きだ」などの問いに「その通り」「そうだと思う」と答えた日本の生徒は、他国に比べると断然少なく、参加57カ国中でそれぞれ54位、52位、57位。つまり、日本の子ども達の「科学への意欲」は世界でも最低水準だったことが分かったのです。
「日本では学力調査の結果ばかりが取り上げられますが、実はこちらの結果のほうが重要です。さらに詳しい調査の結果があって、それによると小学校低学年までは意欲についても問題ないのですが、高学年になればなるほど意欲は落ち、高校生くらいで最低水準にまで落ちるのです」。小泉英明さんはそう憂えます。
原因の一つに考えられるのは、詰め込み教育や暗記偏重の受験システム。「残念ながらマニュアル人間が増えてしまっている可能性があります。近年ノーベル賞では日本人受賞者が増えているようにも見えますが、上記の結果を見る限り、これからは難しくなるのではといわれています」
小泉さんによれば、「どの分野でも、よい仕事を成し遂げている人は間違いなく情熱や意欲があります。実は知育よりも、子どもの意欲を伸ばすことがはるかに重要。意欲があれば、あとは放っておいても自分でどんどん勉強していきます。『意欲を鍛える』ことこそが幼児教育の原点です」
「脳の仕組みが分かれば、今の教育の改善するべき点も見えてきます」と小泉さんは話します。ではどうすれば、子どもの持つ「意欲」「やる気」を引き出し、鍛えることができるのでしょう。
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