「保育園卒は幼稚園卒より成績が低い」はホント?
さらに興味深いのが、学習系の習い事をしている子どもと、ピアノやスイミングなど芸術運動系の習い事をしている子どもとの間に差がなかったこと。「つまり、語彙が豊かになったのは学習系の習い事をしているからではなく、習い事をしていること自体に要因があると考えられます。親とは違う大人や友達とコミュニケーションを取ったり、普段とは違う環境に身を置いたりする機会が増えるからで、習い事の内容はあまり関係ないということです」
■習い事の種類と読み・書き・語彙との関連
一方、別の調査でも、体操教室やバレエ教室、体操の時間を設けている幼稚園や保育園に通う子どものほうが、むしろ運動能力が低く、運動嫌いの子どもも多い、という結果が出ています。
同じ動きを繰り返すので面白くない、先生の説明を聞いたり順番が回ってくるのを待ったりする時間が長い、人と比べるようになる5歳後半以降は自分がうまくできないとその運動そのものを嫌いになる、などの原因が挙げられています。
「結局、自分が好きな遊びのなかで、自由に登ったり、ぶら下がったり、走ったり、ものを運んだりするほうが有効なのです」(内田さん)
では、幼稚園卒と保育園卒で語彙力に差は出たのでしょうか。「私達の調査の結果では、両者に差は出ませんでした。それよりも『自由保育』か『一斉保育』かのほうが重要なことが分かりました」
自由遊びの時間が多い幼稚園や保育園の子どものほうが、小学校1年生の勉強を先取りしている幼稚園や保育園の子どもより語彙力は豊かという結果が出たといいます。
具体的には第3回の記事で触れますが、内田さんは「乳幼児期に大人が子どもの主体性や自発性を大切にしたかどうかが、子どもの将来の学力の差に関わってきます」と話します。
■保育形態による語彙力の差
「何かできるようになったのが早い=脳の発達具合が良い」ではない
オリンピック選手などへ「勝つための脳」の講義をしている脳神経外科医の林成之さんも、早期教育の弊害についてこう話します。
「未熟な脳に無理に学習をさせるのは脳の負担になります。そもそも、ものを覚えたり何かができるようになったりするのが早いかどうかは、脳の発達具合の良い悪いとは関係ありません」
具体的には第3回で説明しますが、林さんは「気持ち」がキーワードだといいます。
「大好きなお母さんに厳しく叱られたりすると、自己保存の本能が働き、『学ぶことは楽しくない』と学習そのものが嫌になってしまう危険性がとても高いのです」