就職、転職、独立、そして、結婚、出産、育児……女性の人生はいくつものライフイベントによって彩られ、同時に多くの迷いも生まれるもの。社会の第一線で活躍する女性から、人生の転機とその決断のポイント、充実したライフ&ワークのために大切にしている価値観を聞くこの連載企画。今回は、教育・保育・介護サービスを展開するポピンズ取締役の轟麻衣子さんインタビュー後編です。日経DUAL編集長の羽生祥子がインタビューします。※前編『轟麻衣子 人の役に立つ事業に携われるのはとても幸せ』もお読みください。

何を始めるにも年齢に制限はない

羽生編集長(以下、羽生) 「母とは違う夢を追う」という時期もあったというお話は意外ですね。

轟さん(以下、敬称略) ポピンズに入ってからも葛藤はありました。母と私はリーダーシップのタイプがまるで違うからです。母は強いカリスマ性と先見性で道なき道を開くナポレオンタイプですが、私はどちらかというと「皆はどう思う?」と個々の意見を聞きながら方向性を決めていくタイプ。この違いを理解して、「私は私のままでいい」と思えるようになったのは実はごく最近で、それまでは悩みましたね。かけがえのない命を預かる事業であり、社員一人一人の人生を背負っている重圧を感じながら、私が発揮すべきリーダーシップを模索していました。

羽生 ブレイクスルーとなったきっかけは何だったんですか?

 自分の中にある「思い」に気づいたことです。ある時、リスクマネジメントの案件で、経営陣で議論したことがあったのですが、「この仕事に人生をかける」という思いを、母に負けないくらいの熱量で持っていることをはっきりと自覚したんです。私はまだ経験も勉強も不足しているけれど「世の中のためになりたい」という情熱だけは誰にも負けない。情熱を絶やさず進んでいけばきっと道は開けていくはず。そう思えた瞬間、決心がつきました。取締役に就任して1年後くらいで、私が38歳になった頃でした。不思議なことに、母が創業した時の年齢と同じで、私自身の心も定まったんです。

羽生 38歳で大きな転機を迎えられたんですね。

 何を始めるにも年齢に制限はないのだと強く思います。起業についても、関心はあるのに「もう○歳だから……」とか「主婦しかしたことないから……」と諦めてしまう女性が多いのはもったいないと思います。子育ても大きな人生経験ですし、すべての経験はビジネスに活かせるもの。若いスタッフにも「一つ一つの人生の節目を大切に生きていった方がいい」と伝えていきたいと思っています。実際、どうなんでしょうか。起業する女性は増えているんでしょうか?

羽生 起業するための条件のハードルが下がって、カジュアル化の傾向はあるように感じますね。起業することは女性のキャリアにとってプラスだと思いますか?