子育てと介護を日本の“おもてなし”として世界のお客様にお見せしていきたい

羽生 今おっしゃった「歯がゆい思い」とは?

 日本でとらえられている「グローバル教育」のニュアンスはどうしても言語教育に重きが置かれていますが、外国語は単なるツールでしかありません。ITもしかりです。それよりも大事なのは多様性に慣れていく経験。さまざまな人種やカルチャーに触れる経験を通じて、コミュニケーションの許容範囲を広げていくこと。能力の面では、今後は「記憶」の部分はAIに勝てなくなることは必至ですので、「疑問を持つ力」「探求心」を高めていくことが重視されていくべきだと思います。

羽生 麻衣子さんのような留学経験を子どもにさせてあげられる家庭は限られると思うのですが、今すぐできることはありますか?

 多様性というのは何も海外だけにあるものではなく、どこでも感じられるものだと思います。まずは身近にあるものに何でも興味を持って探求を楽しむ心を育むことではないでしょうか。例えば「空は何で青いんだろうね?」と言葉をかけて、「どうしてそう思ったの?」と問いを重ねながら、疑問を満たす喜びを子どもに与えていくんです。すると、何か新しいものに出会った時にも拒否するのではなく「なぜだろう?」と理解しようとする気持ちを持てるはず。そして、「あなたはあなたの個性があるから特別な存在。あなたがやりたいことを深めていくことが大切」と繰り返し伝えていけば、他者を尊重する心も育まれます。グローバル感覚は留学をしたから磨けるものではなく、親の気持ち次第で磨かれるものだと思います。

 先ほど、社員教育において「失敗経験が大事」と話しましたが、これもグローバル時代に必要な感覚だとも感じています。日本は「右へならえ」で失敗しにくい社会。失敗をおそれず、本物の体験をたくさんさせてあげることが、多様な価値観が混じり合うグローバル社会を生き抜く糧になると思います。

羽生 これからのポピンズの展開にもグローバル戦略はキーワードになっていそうですね。

 規制緩和を受けての外国人雇用も積極的にやっていきますし、特にアジア方面に向けての保育・教育サービスの海外展開も考えています。イギリスやアメリカからも引き合いが来ているので、日本のサービス精神がどこまで世界に通用するのか、チャレンジしがいのある課題です。東京五輪開催の2020年には、子育てと介護を日本の“おもてなし”のコンテンツとして世界のお客様にお見せしていきたいと思います。例えば、選手の家族が試合観戦をしたいけれど介護や子育てがある……という時に私たちが質の高いサポートをできれば、これは最高のおもてなしとして世界にアピールできます。

羽生 鳥肌が立ちました。なるほど、日本の保育や介護は“おもてなし”になり得ると。

 はい。サービスに従事しているスタッフたちも「誰かの人生を応援したい。世の中の役に立ちたい」という思いを持ってこの仕事をしているんです。その思いを十分に発揮できるチャンスをつかんでいきたいと思います。

羽生 とても楽しみです。私もエネルギーをいただきました。ありがとうございました。

(取材・文/宮本恵理子 写真/Keisuke Nagoshi(Commune Ltd.com.,))