でも、もし虎が女の子だったらどうだろう……

 でも、時々考える。

 わたしはオトコとして生まれ、オトコとして育ち、現在に至っている。だから、オトコとしての経験をもとにして、虎と接している。

 もし、虎が女の子だったら。

 わたしには女の子として育った経験がない。女の子がどんな人生を歩み、どんなことを考えるようになるのか、判断する材料がまったくない。もしそんな存在が、自分の子どもとして我が家にいたら──。

 絶対に虎にしていることと正反対のことをしてるだろうな、と思う。

 放ったらかし? あり得ない。そもそも、床で寝ころがること自体を許さないだろう。息子には断じてお坊っちゃまになってもらいたくない一方で、女の子だったらお嬢様になってもらいたい古式泰然たる願望がわたしの中にはあるらしい。

 でもって、ヨメがムスメのことを雑に扱っていたら?

 キレるな、オレ。間違いなく。

どんぐりを集める虎
どんぐりを集める虎

【妻のアトコメ】

 子どもが女の子だったとしたら?

 もちろん、お嬢様お嬢様して育てるつもりなど毛頭なかった。

 「かわいいわね~」という子どもの頃の周囲からのちやほやのまま育ったとしたら、勘違い人生を歩むこと間違いなし。そんなことのないように、例え恵まれた容姿で生まれたとしても、「女は外見じゃない。中身だ。だから、自分のことは自分でしなさい。どんな時代になってもどんな世界でも一人で生きていける力をつけなさい」とかなり厳しく、そしてある意味、「雑に」育てていたかもしれない。

 自分が女で育ってきた分、その辺り、容赦なかったんじゃないかと思う。

 ところが、虎は男の子だった。

 姉と2人姉妹だった私には、男の子の存在自体、不思議で捉えようがなく、今までの経験のどこを探してもどう接するべきか答えはない対象だ。こうすればこんな影響があるかもと想像するほどの材料も身近になかった私にとって、何考えてるのかよく分からないけど、かわいくてけがれないいたいけな存在を、できることならこのままピュアでいてほしいと思ってしまうのは、確かに無防備すぎるのかもしれない。

 いやいや、これでもなんとか甘やかしすぎないように、公園行ったり、お友達と一緒の場面で、はらはら、やきもきしても、なるべく手も口も出さず、好きなようにさせるようにしているんですけどね。

 ワイルドに、ワイルドに、と心がけているんですけどね。

 でも……、「ママ、ママ」とベタベタしているのは今のうちで、どこかの段階で、母親に向けていたエネルギーを「あれ? こっちじゃなかった」とばかりに、別の方向へ向ける時が確実に来るわけで、そこまでの時間を楽しく、悔いなく(主に私が)過ごしたいがために、「限界までかわいがってやるわ」という思いもあったりするので、我ながらややこしい。

 “男の子心”もよく分からないけど、“母親心”もややこしくてよく分からない。

 自分のことだってよく分からないのに、“父親心”なんて、もっともっと分からん。

 そりゃ、けんかにもなるわなぁ。