わたしを完全にリセットした男子校での3年間。最初の衝撃は「ヤカン直飲み」

 ちなみに、たくましさとかワイルドさとはかけ離れた存在だったわたしの内面が完全にリセットされたのは、高校時代、男子校での3年間だった。理不尽なことがいっぱいあったし、あのころに戻りたいなどと思ったことは一度もないが、それでも、あの3年間がなかったら、今のわたしはまるで違うわたしになっていた。少なくとも、今のわたしが大嫌いなタイプの人間にはなっていた。

 忘れられないのは、サッカー部に入って初日の光景である。

 サッカー部の先輩たちが、ヤカンに入った水を回し飲みしている。他人が口をつけたものを、何のためらいもなく自分の口に運ぶ! 潔癖症のきらいがあったわたしには、それが衝撃的で、もっと衝撃的だったのは、「あれって衝撃的だよね」と話しかけた同じ1年生の仲間に「何が?」と返されてしまったことだった。

 中学時代、わたしが所属したクラブチームでは、個人が自分用のゲータレードやポカリスエットを用意し、自分一人で飲んでいた。当然、それが世界の常識だと思い込んでいた。

 ヤカン直飲み? あれが普通なのか? 普通じゃないのはこっちなのか?

 あたりを見渡してみるに、衝撃を受けていたのはわたしだけのようだった。それが錯覚ではなかったことは、部活生活が始まるとすぐに分かった。精一杯、周囲に気づかれないようにしていたものの、改めて認めざるを得ないところはあった。

 やっぱり、俺ってたくましさが足らない──。

 親の育て方とは関係がないのかもしれない。