「カリスマ転職エージェント」として激務をこなしながら、2人の息子を育てる森本千賀子さん。「日経DUAL」の連載「家族も仕事も『両方大事』でいいじゃない」では、子どもを育てながら仕事を楽しみ、希望のキャリアを築き上げていく方法を語り、多くのワーママを勇気づけています。そんな森本さんが、昨年から今年にかけて「長男の中学受験」というビッグイベントを体験。その1年を振り返り、体験エピソードとメッセージを語ってくださいました。

長男が中学受験を言い出したのは6年生に上がる春休み

 「ぼく、本気で中学受験してみようかな」

 長男がそう言いだしたときの私の第一声は、「何を今さら!」でした。

 それは、小学5年生から6年生に上がる春休みのこと。中学を受験する子達の多くは4年生から受験勉強に取り組むのが一般的ですから、他の子達と比べるとずいぶん遅いスタートです。

 これまで、夫婦の間で長男の中学受験が話題に上らなかったわけではありません。しかし、

 夫「公立でいいんじゃないの?」
 私「今の公立小学校を見ていて、正直疑問を感じるな。先生との距離感もあるし、何より学校側の意志が感じられない。だったら、ちゃんと『教育』に向き合う私立のほうが良いんじゃない? ……でも、何より本人が全く受験に向けての自覚と覚悟を持ってないのは問題なんだけど……」

――と、そんな話をしていました。

 ここにきて息子が「本気で」受験してみたいと言い出したのは、おそらく学校の友達の多くが受験するため、その影響を受けたものと思われます。

 動機はどうであれ、本人の「チャレンジしたい」という思いを否定する理由はありません。

 「じゃあ、がんばろうか」と早速対策にとりかかりました。

とりあえず始めたのは「数学」から

 受験対策の王道といえば、やはり「塾」。ちなみに、それまでの息子の「塾通い歴」はこんな感じでした。

● 小学1年生~約1年
「放課後の学童保育の代わり」という感覚で「早稲田アカデミー」に入塾。週1~2回通っていたが、本人のやる気が湧かず退塾。

● 小学4年生~1年3カ月
SAPIXに入塾。ママ友から「うちの子と一緒に通ってあげてほしい。車での送迎と夕食まで私が面倒見るから」と声をかけられたのがきっかけで、週2回通う。1年後、その子が遠方に転居したのを機に、一人で通うのがおっくうに。塾のカリキュラムをこなすには家庭学習が重要だが、そのフォローが十分できないこともあり、退塾。

● 小学5年生の春休み~約1年
自宅の近くに「面倒見の良さ」を売りとする個人塾がオープン。「家でテレビ見ながら宿題をするよりも、塾でやったら?」と勧め、入塾。週2回通い。でも、宿題もままならず、とにかく「通っている」というだけの状態。

 つまり、「中学受験」を意識した勉強をそれまでしたことがなかったのです。そこで、私の友人で、算数専門のプロ家庭教師である安浪京子さんに相談しました。

 「とりあえず算数だけは早くとりかかって。他の教科に比べ、算数は後から挽回するのが難しいから。算数で点数を稼げればある程度はカバーできるから」

 そうアドバイスを受け、まず算数の家庭教師を京子さんに依頼。5年生の春休み辺りから、週1回・1時間あるいは2時間、自宅に来て教えていただきました。

 ちなみに、息子はもともと算数は好き。中学受験対策の模試を初めて受けたのは6年生の5月でしたが、算数だけはほかの教科と比べても得点は取れていて、京子先生からも「算数のセンスはとてもいい」とお墨付きをいただきました。

 あとは、他の教科もがんばって上げていくことが課題。しかし、当時、勉強に集中できない事情があったのです。